オスカとの戦闘(4)
ガキィィン!!という音とともに隆二の剣とオスカの薙刀が接触する。
隆二は片手で剣を構えながら、自分のスキル表を確認する。
そこでエクストラスキルに見覚えのない項目があった。
世界樹との戦いの際、『無に還し』の他に『消滅の創生』というエクストラスキルが存在した。
しかし、その時点では『使用不可』という表示だった。だが現在は。
『消滅の創生』…消したステータスを他人に付与、または自分に付与できる。消した物ならば、実体化可能。
《現在使用可能ステータス一覧》
世界樹
エクストラスキルは使用可能になり、そこには何故か自分がこの前消したモノの名前があった。
(世界樹だと?使用可能ってことはレインのヤツが出てくるのか?)
「『消滅の創生』の『世界樹』を選択」
とりあえず選択してから考えようと隆二は『世界樹』を呼び出してみる。
選択しても何かが起こることもなく、変化したのは『消滅の創生』の『使用中ステータス一覧』に『世界樹』が表示されているだけ。
実感は湧かないが簡単に言えば、世界樹魔法が使えるようになったということだろう。
「ノン!お前は先に離脱しろ!」
「なんでですか!リュウジさんを置いては行けません!」
「ここから戦闘は激化する。その前にお前を離脱させることで、巻き込ませずにすむ。これはお願いだ!お前を傷つけたくはない!」
本当は『無に還し』を使いたいからだが、ノンがいると『白い爆発』の餌食になるので離脱させたいのだ。
「わかりました!ですが、結界が張られているので私はここから出れませんよ?」
隆二は狼男の攻撃を受け止めながら言った。
「今から俺が結界を破る!」
オスカの攻撃を真正面からわざと受けて、ノックバックを利用し一気に後方へ飛翔する。
「世界樹幹創生術!」
魔法陣から出現した巨大な木の幹は、オスカへ向かう。
「そんなちんけな攻撃で我を倒せるとでも?」
「さて、どうかな?」
「……?」
幹はオスカに向かう途中に方向を転換した。
ダンジョンの天井に向かって突き進む。
「前、魔導書で見たことがあるんだ。大規模な結界を張るときには空間に張るんじゃなくて、その場所にある建造物に沿うように張るんだろ?」
「お前…まさかっ!」
さもそれが当然と言うように隆二は言った。
「なら、建物の一部分さえ壊せば結界は解ける」
天井まで到着した幹はそのまま突き破りながら、外を目指す。
ズガガガガ!という音が部屋に鳴り響く。
パリッ!っという自然ではありえない音が響いた。
「ビンゴだ」
隆二の予想通り、ダンジョンの天井部分が破壊されたことにより結界が破壊された。
それを確認し、隆二は次の行動に移す。
「いいかノン。今からお前をテレポートさせる。お前は一足先に自分の村へ向かえ」
「リュウジさんは?」
ノンが心配そうにしながら問う。
「コイツを倒してからお前のところに行く」
「ちゃんと…ちゃんと帰ってきてくださいよ?」
「ああ。必ず」
隆二の手がノンの手に触れる。
「テレポート」
ノンがいなくなった部屋に静寂が訪れる。
やがて、オスカが話しかけた。
「…あの小娘を逃がしてよかったのであるか?」
「何故に?」
「あの小娘は少なからずお前の知識の源であったし、同時に力の源でもあっただろう。それを自分の元から離してもよかったのかと聞いているのである」
それを聞いた隆二は肩をすくめ、
「もちろん、知識部分はノンに頼っていたときが多かったから、お前がまた俺の知らない魔法を使ったら対処できないだろうな。だけどな、俺とお前の激突にノンを巻き込むわけにはいかない」
「御大層な理由であるな」
「いや、そんな尊敬されるようなことじゃねぇよ。ただ、自分の中にあるものだけは守り抜きたいだけさ」
隆二は剣を構え直す。
「さて、始めようか。ここから俺も本気を出すぞ」
『限界突破』のあるダンジョンの戦い
現在の状況
神崎隆二…戦闘中
ノン・マティス…離脱。戦闘可能
オスカ・ヘンリー…戦闘中。エクストラスキル開放状態
仮面の男…戦闘可能。現在地不明
ルイス・ハーン…戦闘可能。現在地不明




