オスカとの戦闘(3)
怪物たちの放つ攻撃は次第に隆二の体力を奪っていった。
「がぁっ!」
1匹の狼男の攻撃を受けているときに、他の狼男の攻撃が隆二に直撃した。
(このままじゃジリ貧だ!自分と同じステータスを持つ分身を生み出すような上級魔法にはトリックがあるはずだ!)
「リュウジさん!魔法陣です!魔法陣を壊せば分身を消せます!」
打開策を出したのはここでもノンだった。
「魔法陣?ノンはそこから狙えるか?」
「むずいです!狼男たちが壁になっているので」
隆二側からも狼男たちが壁になっているので魔法陣は狙えない。
たとえ狼男たちが壁になっていなくとも、数匹の狼男たちを相手にしている隆二には遠距離魔法を放つ時間もない。
「そこの娘は魔法に結構詳しいであるな。その娘の言っていることは正しいぞ。しかし、唯一の弱点に対策をしないほど我は阿呆ではない」
ようやく見つけた打開策もオスカによって砕かれる。
(すぐに撃てる遠距離魔法はなんだ?早く撃てる魔法があったとしても、俺が展開した魔法陣を破壊されるだろう。破壊される覚悟で魔法陣を沢山展開させるか?くそ!こんなときに拳銃があったら!)
「ん!?拳銃か!その手があった!」
隆二は腰に掛けていた拳銃に手を伸ばした。
使っていなくて存在を忘れていたが、隆二がこの世界に来た初日にギフトとして送られてきたものだった。
デザートイーグル.50AE。
拳銃の中では高い攻撃力と貫通力を持つ。自動拳銃で射撃姿勢さえしっかりとしていたら女性や子供でも使えないことはない拳銃。隆二が前の世界で愛用していたものである。
拳銃を手に持ち、狼男たちから逃げるように後方へ走る。
ある程度距離を稼いだところで前へ向き直る。
そして、隆二は数個展開されている魔法陣に狙いを定める。
パァン!という音を出して発砲した拳銃の銃口は、次々と狙いを変える。
部屋中に発砲音が鳴り響く。
「なにこれ!すごい音!」
ノンは思わず耳を覆う。
敵側のオスカも見知らぬ武器に驚愕していた。
放たれた弾丸は壁になった狼男に否応なく直撃する。
「ガァァァ!」
弾丸を受けた数匹がのたうち回る。
皮膚上に少しめり込んだだけで、致命傷にはなっていないが見知らぬ武器に、見知らぬ傷つけ方をされたら誰でも慌てるだろう。
「何だその武器は!もしや…『神国』の武器か!」
「『神国』?」
隆二は魔法陣を破壊しながらも疑問点を聞く。
「おのれ!そのような武器にやられるほど我は弱くはないのである!」
隆二の質問には答えずに、オスカは魔法陣を消した。
分身が次々と消えていく。
「その武器を撃ってこい!全て避けてやるのである!」
オスカは薙刀を構える。
「やれやれ。何にそんなに対抗心を燃やしているのかは知らないが、直撃すると痛いぞ?見ていただろお前。自分の分身がギャーギャー騒いでいたのを」
「受ける必要はないのである。全ての攻撃をかわし迎撃すれば造作もない」
「あっそう」
素っ気なく返しながら拳銃を構える。
素っ気なく返したのは避けれるはずがないと、迎撃できるはずがないと、弾丸のスピードに追い付けるわけがないと、そう思っているからだろう。
しかし、隆二の考えとは裏腹に弾丸は全て避けられるか、薙刀に斬られていく。
「化け物かよ!?この世界では常識は通用しないな!」
弾丸を処理し、一気に隆二の目の前まで迫ったオスカの薙刀を右手に持っていた剣で迎撃する。
「狼男の性能を甘く見てもらっては困るのである。普通の人間とは身体能力に大きな差があるのだ」
「そうみたいだな!お前に拳銃が効かないことはよく分かったよ!」
隆二は剣を前へ強く押して、オスカを後方へと吹き飛ばす。
オスカは空中で数回回転しながら、苦もなく着地する。
(これでまた振り出しか!)
隆二は改めて気合を入れ直し、オスカと激突する。
『限界突破』のあるダンジョンの戦い
現在の状況
神崎隆二…戦闘中
ノン・マティス…戦闘中
オスカ・ヘンリー…戦闘中。エクストラスキル開放状態
仮面の男…戦闘可能。現在地不明
ルイス・ハーン…戦闘可能