行きついた部屋
ルイスと仮面の男。
戦闘の結果は明らかだった。
片方は赤い液体を噴き出しながら倒れた。
「クラウ・ソラスが一発必勝というわけでもないが、『一度鞘から抜かれたらその一撃から逃れられる者はいない』とまで言われたからな。私の武器がクラウ・ソラスと分かった時点で君は降参すべきだった」
男は倒れているルイスに言った。
意識が無いため彼が男の話を聞いているわけでもないが、男は話を続ける。
「後のことは心配しなくてもいい。君はどこかに隠しておいてあげるよ。最初に言ったように今回は『無に還し』を見に来ただけだ。君たちの作戦を邪魔するようなことはしないし『限界突破』を奪うつもりもさらさらない」
男は約束通りにルイスの体を部屋のクローゼットの中に隠した。
「死体を隠すってのはあんまり性分じゃないけど。まあ、これで『無に還し』がオスカと直接対決する状況が作れた」
***
「全然モンスター来ねぇな。あのハットの男はなにしてんだろ」
「その言い方はモンスターが来るのを心待ちにしていると勘違いしますよ。仕掛けてこないならいいんじゃないんですか?向こうにも色々事情があるのでしょう」
意外にバッサリしてんなー、と答えながらダンジョンの奥へと進んでいく。
目の前に見えてきたのは通路ではなく、両開きのドアだった。
「他に道は無いですね」
ノンの報告を聞いて隆二は柄に手をかける。
ここしか行くところがないということは、この先に敵がいる可能性が高いということだ。
ギィ…という音を立ててドアを開ける。
「なんだ…何もないじゃないか」
そこには家具が並んでいるだけで生物は存在していなかった。
しかし、部屋には異様な匂いが漂っていた。
それは隆二が元戦闘職だったから分かったのかもしれない。
鉄臭い血の匂い。
そんな匂いがあるのにも関わらず、この部屋に血を出すような生物がいないというのはイレギュラーな状態だった。
血も新しいものだと確認できた。
「血…ですね。誰のでしょうか」
日本人で血を見慣れている者などそうはいないだろう。だが、この世界ではモンスターと戦うことが主流であり攻撃を受ければ怪我もするし血も出るため、血には慣れているのだ。
血がある以外はおかしな点がない部屋には、先に進む階段があった。
彼らには、進まないという選択肢はなく早く敵を倒すためには先に進むしかない。
階段はとてつもなく長く最終地点が目視できないほどだった。
「長すぎだろ。それはいいとして、敵と出会ったらノンはバリア内に隠れておく?」
「私も少しくらい攻撃魔法は使えるので加勢します。でも危なくなったらバリアに入っておきますね。リュウジさんの邪魔になるかもしれないですから」
作戦という作戦はないのだが、前衛はやはり隆二がいいだろう。
隆二はノンが使える攻撃魔法を知らないため聞こうとしたが、その前に階段の頂上が見えたため聞くのを止めた。
「行くぞ。後ろに隠れておいて」
「はい」
後ろにノンを庇いながら階段を上り終えた先にある、空間に足を踏み入れた。
「やっと、であるな。たかが数十体のモンスターに何分かかっているのであるか?」
待っていたのはハットの男ではなく、見たことがないワイシャツを着た体格のいい男がいた。
『限界突破』のあるダンジョンの戦い
現在の状況
神崎隆二…戦闘可能
ノン・マティス…戦闘可能
オスカ・ヘンリー…戦闘可能
仮面の男…戦闘可能。現在地不明
戦闘不可能者
ルイス・ハーン




