襲撃者
どこの場所かもわからない部屋に2人の男がいた。
片方は五体満足で立っていて対照的にもう1人の男は、服がところどころ破け赤い液体がにじみ出ていた。
(な、にが、起きた…?)
倒れている方の男、ルイスは突然起きた出来事に頭が追いついていなかった。
いきなりまばゆい光が見えたと思ったら、意識が回復したときにはすでに刃物で斬りつけられたような痕があり、体から血が溢れ出ていた。
「起きたかな?」
立っている男、仮面の男は少し身動きしたルイスに話しかけた。
「クラウ・ソラスとはまあ他の名称を使えば『光の剣』やら『不敗の剣』と呼ばれている。ケルト神話の武器だな。君は分かるだろう?『転生族』を上司に持っているのだから」
「ああ…知っていますぜい。『神国』のある世界は近代技術がどの世界よりも進んでいるし、何故か『天界』の情報を多く知っているから」
ルイスは体を仰向けにしながら答えた。
「本当は君を一発で殺せたが、無意味な殺傷は避けたいもんでね」
「何を今さら」
即座に体制を立て直すと、ルイスは男の腕を切り落とすためにハルパーを握った。
「ありゃま。結構ダメージをくらわせたつもりだったが、まだそこまで動く体力があったとは」
驚いたふりをしながらも、男はルイスのハルパーを自らの武器で迎え撃った。
「もう即死攻撃使うか」
そう呟いた男は武器に更に力を入れる。
その瞬間。
まばゆい閃光が放たれ、ルイスの視界を奪った。
***
(何とか受けきったか)
ゴーレムの壁を全て迎え撃つことに成功した隆二は、瓦礫の中にいた。
「ふんっ!!」
強引に瓦礫を押し退けて脱出することに成功した隆二は、まず現在の状況を確認する。
「リュウジさん!」
視界に入ってきたのは、バリア内にいるノンに詰め寄るゴーレムたち。
隆二の中で何かが切れた。
「ノンに手を出すな!!」
これまで出したことのない速度で走り出した隆二は、そのままの勢いでゴーレム数体を吹き飛ばす。
振り返り際にも数体のゴーレムを倒した隆二は残っているゴーレムに拳を打ち込んで倒す。
一瞬の内にして、ゴーレムが全滅した。
「大丈夫か!?」
「大丈夫です。それよりリュウジさんの方が危なかったんじゃないですか?怪我はしてないように見えますけど…服がこんなに汚れちゃってますよ。エミリー様が言っていた無茶というのはこういうことですかね」
ほんわかした笑顔で隆二を和ませたノンは、隆二の服に付いた砂などを払う。
「さあ。先に進みましょう?いつまでもダンジョンにいるのは嫌ですからね」
ダンジョンを進んでいく隆二とノンは極めて平和だった。
彼らは知らないが、彼らにモンスターを送っていたルイスは襲撃者と戦っているために、隆二たちの方に手が回せないのだ。
やがて、いや数秒の出来事だった。
「終わりか。この武器を使ったら勝利確率は100パーセントだからな」
男がそう呟いた。
『限界突破』のあるダンジョンの戦い。
現在の状況。
神崎隆二…戦闘可能
ノン・マティス…戦闘可能
ルイス・ハーン…戦闘可能。体の一部を損傷
オスカ・ヘンリー…戦闘可能。現在地不明
仮面の男…戦闘可能。