ゴーレムの真の力
ゴーレムの真の力は、最初に隆二と戦ったゴーレムにも備えられていたのだが、隆二がすぐに倒したため真の力を発動できなかったのだ。
1匹のゴーレムが壁に手を接触させた。壁と手は徐々に一体化されて、壁はゴーレムの思い通りに動く物となってしまった。
「これが真の力!?」
隆二はミノタウロスたちを倒しながら観察をしていたが、その光景は異様だった。
そのゴーレムが左に腕を振るえば、腕に繋がった壁も一緒に左に動く。
ブンッ!と振るわれた壁はそのまま隆二に向かって来た。
「避けようがないじゃないか!」
隆二は拳を作って壁にを殴る。
バゴォォン!!という音と共に隆二の拳とゴーレムの壁が激突した。
壁の破片は四方八方に飛び散り、周囲にいたモンスターも巻き込んだ。
そのままの勢いでゴーレムを倒してしまおうとした隆二は拳を振るった。
だが。
できなかった。
させてもらえなかった。
隆二の正面に壁が生成された。正面だけではなく、隆二を囲むように全方位に壁が生成された。
そして唯一壁で囲まれていない頭上に何かが浮かんできた。
頭上に浮かんでいるのはゴーレムが操っている壁だ。
壁は何個もあり、そのまま隆二の頭上に勢いよく落ちてくる。
隆二は避けることもできずそのままの状態で壁を向かい撃ちした。
ドゴォォォン!!という衝突音を響かせた。
隆二はゴーレムの真の力を、接触した石材を思い通りに動かすと解釈していたがそれは間違いだ。
確かにその能力もあるが、それに加え、近くにある石材を思うがままの形にしたり移動させたりできる。
今回の場合は、壁の石を切り取り、隆二の周囲に移動させたということだ。
隆二が今回ゴーレムの攻撃を受けてしまった原因は、この真の力への認識の違いだろう。
***
本来隆二たちに攻撃をする側だったルイスは、襲撃者と戦っていた。
襲撃者の仮面の男は手をかざし、指からレーザーのようなものを出してきた。
それを難なく避けたルイスは自分の武器で攻撃を仕掛ける。
ルイスの武器はハルパーと呼ばれる物で、湾曲した刃が特徴だ。リーチが短いが人間の部位を切り落とすには適任だろう。
仮面の男の首を切り落とそうとした横振りの攻撃は、男が顔を少し動かした程度で避けられてしまった。
「ちょこまかと!めんどくさいですね。それにさっきのレーザーは魔法ですかい?見たことがないですけど」
「正真正銘の魔法だよ。だが、一般には知られていないかな。私の素性を知っていれば君も分かったかもしれないが、君の上司は多分知っているよ」
2人は会話をしながらも互いに攻撃を放っていく。
しかし、互いに攻撃に当たることもなく、攻撃して避けるの繰り返しであった。
「君のその武器…『武器スキル』が観覧できないな」
「観覧できないようにしてますからね。ですが、ここで朗報でーす!もうお前に構っていられる時間はないので『武器スキル』を開放してあげまーす!」
ルイスはハルパーの刃の部分に手を触れさせる。
その瞬間、部屋の空間が丸ごと斬られたかのような現象が起きた。
それはルイスのハルパーから放出された、斬撃の残像であった。
その斬撃はもの凄いスピードで男の首を斬り落とした。
「油断してましたねぇ~?この武器のスキルは『斬撃』です!普通の剣からでる斬撃よりも破壊力は段違いですよ。まあもう死んじまったから説明する意味も無いんですが」
ガサ…と音がした。
得意げに話していたルイスの顔が固まった。
「いや~今のは焦ったね。まさか『1人目の私』をこうも簡単に殺されてしまうとは」
「お前…何者だ!?」
「答える必要はない。こちらもお返しに『武器スキル』を使ってあげよう」
「クラウ・ソラスという武器はご存知かね?」
その質問を受けた瞬間、ルイスの視界は闇に包まれた。