モンスターパレード
「意外に考える脳はお持ちのようですぜい?」
『ゴーレムを倒したくらいで調子に乗って貰っては困るのである』
ルイスは通信魔法を使ってオスカに報告をしていた。
彼らにとっては、隆二がミノタウロスとゴーレムを倒すことは想定内であり、何も心配することはなかった。
『次は何をするのであるか?』
「次はですねぇモンスターパレードです。強化したモンスターを送りまくってやりますぜい」
モンスターパレードはその名の通り、大量のモンスターがいる状態を表しているのだが、彼らはそのモンスターパレードも隆二がクリアすると推測しているのである。
彼らにとっては、ミノタウロスもゴーレムもこれから送るモンスターも全て手駒なのである。
モンスターは隆二の体力を減らすためだけに送り込んだだけである。
捨て駒のようなものだろう。彼らにとっては、ゴーレムの変わりなど沢山いるのだ。
「第三試合目開始ですぜい!」
***
高さはあるが、横幅はそれほどないダンジョンの通路にモンスターが溢れかえっていた。
ルイスの強制転移によって送還されてきたモンスターはある者を揃いに揃って見定めていた。
「多すぎじゃないか…?さすがにこの数を一遍に倒そうとしたら、このダンジョンが崩壊するんだが」
「逃げましょう!命大切!」
「逃げようと言われても……」
隆二たちは四方八方モンスターに囲まれており、逃げ道のようなものは存在していない。
「まあ一応ノンは空間防御の中に入っておいて」
「逃げないんですね…了解しました」
ノンが渋々了承したのを隆二は確認し、モンスターの数を数えてみる。
隆二がマップを使って見ると、ざっと30匹ほど確認できた。
隆二は詳しいことは知らないが、巨大コボルトが10匹、巨大ゴーレムが10匹、巨大ミノタウロスが10匹と中々カオスな状態となっている。
ここでも先に仕掛けたのはモンスターたちだった。
コボルトたちがこん棒を振るった瞬間、隆二は左に避ける。
隆二が元いた場所は、こん棒により石が砕け散った。
「くそ!攻撃力がやたらと高いな」
こん棒というのは打撃系の武器で、そこまで破壊力がないのだがルイスによって攻撃力が強化されたコボルトが振るうと、相当な破壊力を出すのだ。
隆二が避けた場所にモンスターがいないわけでもなく、追い打ちをかけるようにミノタウロスが斧を振り下ろしてくる。
それを辛うじて後方に飛翔して避けると、そこで待ち構えていたゴーレムの一撃をまともにくらってしまう。
「ぐあっ!」
ドゴォォォンー!!という音を出しながら壁に激突する。
「リュウジさん!無事ですか!?」
ノンがバリア内から心配していると、やがて砂煙がなくなり隆二の五体満足の姿が確認できた。
「大丈夫だ…。意外に痛かったが、スキルの『苦痛軽減』のおかげですぐに痛みが無くなったよ」
隆二は立ち上がると、近くにいたコボルトに一発入れてHPを全損させた。
「HPか防御力が極端に高いのはゴーレムだけのようだな」
隆二は走って、コボルトとミノタウロスに一発入れて次々と倒していく。
「この程度なら問題ない。すぐに倒してお前のところに行ってやる」
***
予想以上に次々と倒されていく捨て駒を見ながら、ルイスは言った。
「HP・防御力の強化はゴーレムだけでいいと思ったが、コボルトとミノタウロスにもしとけば良かったですな」
予想以上と思いながらも、ルイスにはまだ余裕があった。
「お前らはまだゴーレムの真の力を知らないんですな~!」
ゴーレムの真の力というのも、ルイスの研究によって授けられたものである。
「少し時間をいいかな?」
キィ…!と部屋のドアを開ける音に男の声がかぶさった。
「…誰ですかい?」
ルイスが手元にある自分の武器に手を伸ばしながら質問する。
「いや、君たちの作戦を邪魔するようなことをしにきたわけじゃない」
ルイスの方に歩んで来た男は、不気味な仮面を被っていた。道化師の赤い鼻を取ったような。
それ以外は無地の黒いズボンに、白いロングコートという比較的一般的な服装だ。
「うちのボスが『無に還し』に思い入れがあってね、少し彼の行動を見に来ただけだよ」
「いやいや、十分邪魔なんですがね。とっとと失せてくれませんかね?今回は『ヘンリー家』が『無に還し』を初めに見つけたんですからね」
「やれやれ。最近の若者は血気盛んで怖いね。穏便に済ましてあげようと思ったんだが」
仮面の男は、拳を突き出す。
「容赦はしないよ」
「望むところですぜい!」
ルイスも自らの武器を持ち、走り出す。
2人が激突した。
『限界突破』のあるダンジョンの戦い。
現在の状況
神崎隆二…戦闘中
ノン・マティス…戦闘可能
ルイス・ハーン…戦闘中。現在地不明
オスカ・ヘンリー…戦闘可能。現在地不明
仮面の男…戦闘中。現在地不明




