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ミノタウロス

 隆二がステルダム国を出発して時間が少し経ったころ。

 ステルダム国の城内。


「ストラスフォード国に行くの?」

「ああ。少し貿易のことで交渉にな」

 話しているのはエミリーとマクルスである。

 ステルダム国とストラスフォード国は隣接しているので、昔から友好関係にある。

 貿易も盛んで、ステルダム国からは主に食料品を輸出しストラスフォード国からは鉱物資源を輸入している。国同士の貿易摩擦や経済格差もなく長年友好関係を続けてきたが、ステルダム国の元々少ない鉱山をほとんど取り付くしてしまったため鉱山資源の輸入を増やしてもらおうと、マクルスは考えているのである。

 鉱山はこの世界ではとても重要な価値がある。

 まだこの世界はどの国がどれくらい領地を所持しているかも不安定なため戦争が起きやすく、防具が必要不可欠である。防具作成材料はもっぱら鉱山から取れる鉄や金であるため、鉱山が如何に重要かが分かるだろう。

「私もついて行っていい?」

 エミリーがストラスフォード国に付いて行きたいのは貿易交渉を見たいというわけではない。

 エミリー的には、大人たちが椅子に座って話をしていることなどどうでもいいのである。

 付いて行きたい理由は、隆二たちがストラスフォード国に向かったからだ。

「師匠…リュウジさんがね、依頼でストラスフォード国に行っているの」

「リュウジ殿か。彼は優秀だからな、依頼も多く来るだろう。ならお前は向こうに着いたらリュウジ殿を探しに行くか?」

「ストラスフォード国は広いから見つけられたらでいいかな。観光でもしながら探そうかな」

 エミリーは隆二にストラスフォード国のどこに行くのか、などとは聞いていないため見つけようがないというのが現状だ。それでも探そうとするのが彼女がどれだけ隆二を思っているかが分かるのだが、本人は自覚していない。

「そうか。ならもうすぐで馬車が来るから、一緒に乗ろう」


 程なくして馬車が来たので、エミリーとマクルスは乗り込み、出発した。



***



 ルイスが隆二たちとの間に発動したのは強制転移(テレポート)である。

 『ヘンリー家』によって開発され強化したモンスターを強制転移させただけである。


 魔法陣から出てきた影はどんどん大きくなり、ただでさえ高かったダンジョンの天井を少しえぐった。

「デカすぎだろ…!」


 隆二でも見たことのないサイズのモンスターが現れる。

 モンスター名『ミノタウロス』。

 通常のミノタウロスも大きいがここまで大きくはなく、『ヘンリー家』の開発によって巨大化されたのである。

「ミノタウロス…!リュウジさん、一旦引きましょう!ミノタウロスは上級冒険者が数人いないと倒せないレベルのモンスターです!」

「んー。多分大丈夫なはずだ。ノンは下がってて」

「正気ですか!?」

 ノンが言ってくるのを聞き流し、隆二は拳を構える。

 剣で戦ってもいいが拳の方が攻撃回数が増えるので、よっぽどのことがない限り剣を使わなくても勝てるだろうと隆二は考えているのである。


 絵面的には、貧弱そうな人間が強靭そうなモンスターに立ち向かっているが、隆二のステータスを考えると、怪物同士がぶつかり合っているということになる。


「ンモォォォォォォオ!!」

 ミノタウロスが振り下ろす斧を、隆二は体を捻って避ける。

 避け際にミノタウロスの腹に向かって、足を薙ぎ払う。

「はぁっ!」

「ヴォォォォォ!!」

 ミノタウロスの体が大きく揺らぐ。

 その間に、隆二は攻撃を畳みかけていく。

 腹に右拳を放ち、左拳をわき腹にめり込ませる。

「ヴォォォ………」

 ミノタウロスはHPを全損し、光の粒を巻き散らして消えた。


 通常のミノタウロスであれば、隆二の最初の一撃でHPを全損していたが『ヘンリー家』の開発によってHPが3倍程上がった。

 だが、隆二の圧倒的な攻撃力には耐えれなかったようだ。

「ほら。倒せただろ?」

 その言葉を聞いたノンは数秒固まっていたが、ハッとした。

「いやいや!リュウジさんって相当強いじゃないですか!ていうか強すぎません!?」

「まあまあ、倒せたからいいじゃないか。ほら、先行くぞ」

 隆二は歩みを進め、ノンも彼に付いて行った。

 ノンの隆二への質問ラッシュがあったようだが。

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