古代書物置き屋
「ダンジョンに行かないとしても、一旦ストラスフォード国に泊まることをお勧めします。ここから私の村までは距離があるので」
ストラスフォード国に到着した俺たちは、ノンの提案で宿屋で部屋を借りた。
ストラスフォード国はステルダム国よりも広い領地を持っており、経済力もあり貧困の差があまりないのが特徴だそうだ。ステルダム国にもいたが、会うことのなかったエルフ族や獣人族も普通に暮らしている。
エルフ族とは、長く尖った耳を持ち、長命で知られている種族だ。
獣人族は、動物の体を宿しており人族より攻撃力が高いのが特徴だ。
「それにしてもデカい城下町だな。何か珍しい店とかないか?」
「そうですね…『世界の記述』の本があるお店があるんですが、そこに行きますか?」
「ああ。そこにしよう」
『世界の記述』には『限界突破』の場所も記述されていたというんだから、他にも有力な情報を入手できるかもしれない。
あわよくば、俺がなぜ『この世界』に来たのかも知りたいところだ。
ノンに連れられて『世界の記述』が置いてある、もとい『古代書物置き屋』に到着した。
「いらっしゃいませ」
中のカウンターにいたのは、こげ茶色のショートカットの女性だ。
「『世界の記述』っていう本は置いてありますか?」
「はい、ただいま」
カウンターの奥に行った女性は、凄く分厚い本を手に持って帰ってきた。
「どうぞ」
本を受け取り読んでみたが、全然読めない。
これで翻訳スキルを取得できたら読めるようになるんだが、スキルが発生しないのでまったく読めない。
「これ何の字ですか?」
「何の字かは分かっておりませんわ。でも著者は分かっています。世界史上最凶と言われた魔術師『カウスター・クーベル』ですわ」
カウスターとかいう人は一体何者なのだろうか。
『世界の記述』は解読不可能だから内容が分からないが、どの時代からどの時代まで記述されているか、何故カウスターとかいう人は自分しか分からない文字で記述したのか。知りたいことは色々あるが、この女性に聞いても意味がないだろう。
「ちょっと待って。ノン、確かお前『世界の記述』の『限界突破』の部分を呼んだとか言ってなかった?」
なんで誰も読めない字を読むことができたのかが問題だ。
「その訳の分からない文字ではなかったんです。『限界突破』の項目だけ、解読可能の古代文字で書かれてあったので読めました。私結構頭良いんですよ」
なんだと。この12歳か13歳かぐらいの女の子が、古代文字が読めるって結構すごいことなのかもしれない。
まあ気になるのは何故『限界突破』の項目だけが、解読可能の古代文字で記述されていたのかだ。
『限界突破』の情報が重要じゃないわけがないし、だからと言ってその部分だけわざわざ古代文字にする理由も思い浮かばない。
「その本って買えるんですか?」
「いえ。この本は研究者の方もよく見に来られるので、お客様に購入するのは遠慮してもらっていますわ」
「そうか。じゃあまた来るよ。解読したいしね」
そう言って俺とノンは店を出た。
「もう夕方か」
「馬車に結構乗りましたからね」
「そうだな。もう宿屋に行くか」
ノンの村に明日は向かう。
そのために今日は早めに体を休めるほうがいいだろう。