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出発

「もう1つ宿を借りれませんか?1日だけでいいので」

 宿屋に到着した俺とノンは宿を借りるために宿屋のおばちゃんに話しかけた。

「ん?あんた妹がいたのかい?」

「違います」

 確かに俺とノンは瞳の色も髪の色も黒で一緒だし、お互い黒色が好きなので全身真っ黒なので兄妹きょうだいに見える。

「違うのかい。見るからにそうだけどね。まあ一部屋空いているからそこを使いな」

 ゴールドを払って自分たちの部屋に行く。

「じゃあ明日の朝、俺が起こしに行くから。寝てていいよ」

「ありがとうございます。朝はちょっと苦手なので」

 お互いにおやすみと言って部屋に入った。


 さて、少し気になることがある。

 ノンの依頼はダンジョン攻略。

 ダンジョン攻略まではいいが、その先はなんだ?

 ボス部屋かなにかに宝があるならいいのだが依頼書には『ダンジョン攻略』しか書かれていない。

 ここはノンが何らかの目的を持っていると予測していいだろう。


 明日からちょくちょく探りを入れようと考えて、俺は寝た。



***



「君も『無に還し(ノンイレーズ)』が気になるのかな?」

 ある組織のアジト。

 光源もない暗い部屋に2人の男がいた。

「まあそうであるな。『前回の無に還し(ノンイレーズ)』には負けたが、『今回の無に還し(ノンイレーズ)』は自分の能力も把握していないのであろう?」

「まあ会った感じそんなところかな」

 ワイシャツを着た体格のいい男と、スーツを着て頭にサングラスをかけている男が交互に話す。

「なら早々に消しといたほうがいいな。我の強敵となる前に」

 ワイシャツの男が語尾を強めて言った。

「僕には君が『無に還し(ノンイレーズ)』を倒せるとは思えなけどね」

 スーツの男は馬鹿にしたように言った。

「戯言を。我が負けるわけがないだろう。我は『転生族』の『ヘンリー家』であるぞ」

「相手は『転生族』の中で最強の『神先家』だけどね」

「ふん。それは昔の話だ。最近では『天界』でも『冥界』でも見なくなったであるよ」

「…どうだろうね」

 ワイシャツの男の言葉にスーツの男は一言しか返さなかった。

 スーツの男の瞳はまるで、何かを見透かし真実を知らない者をあざ笑うかのようだ。

「我はもう行くぞ。どこぞの馬鹿が『限界突破(リミットブレイク)』のあるダンジョンの同行人に『無に還し(ノンイレーズ)』を雇ったらしいからな。ちょうどそれにも興味があったから都合がいい」

 そう言うとワイシャツの男は部屋のドアに向かう。

「頑張ってね。僕も『限界突破リミットブレイク』には興味があるから」

 スーツの男の言葉を聞くとワイシャツの男は部屋から出て行った。

 

 ワイシャツの男を見送ったスーツの男は不敵に笑った。

「君はなめすぎている。『無に還し(ノンイレーズ)』はそう簡単に葬れないように『神先家』が開発したのだから」



***



「ん…朝か」

 窓から朝日が差し込んでくる。

 身支度を早々に済ませ、隣のノンの部屋に向かう。


 トントン…

 ドアをノックする。

 数秒かかってから中から声がかかった。

「ふぁ~い…どうぞぉ~…」

 すんごい眠そうですけど。

 部屋に入るとノンは上半身だけを起こし目をゴシゴシこすっていた。

「おはようござ…いま…す…」

 言葉を発するうちにノンの瞳にまぶたが落ちてくる。

「起きろ」

 俺はノンの両頬をつねった。

「ふぁい~。起きますからぁー」

 あ、なんかこの感触いい!

 少し危なそうなことを考えたことは忘れて、ノンが着替えるので部屋の外に出る。

 ノンが着ていたのはパジャマのような薄い肌着であった。

 この世界にもパジャマのような概念があるのか?

「おまたせしましたー」

 まだ少し眠そうなノンが部屋から出てきた。

 服装は昨日と同じ真っ黒なので、俺と揃ってブラックコンビができた。


 食堂に降り、ノンと一緒に朝食を食べる。

 彼女はまだ眠いらしく、途中コックン、コックンなりながらパンを食べている。

「さて、これを食べ終わったら早速『ストラスフォード国』に行きたいところだけど、少し寄りたい所があるからその後でいい?」

「はい。大丈夫です」

 眠気がとれたのかしっかりとした返事が返ってきた。


 朝食を食べ終えた俺たちは城を目指す。

 ノンは目的地を知らないけど。

 城の門に向かうとそこには門番以外に2人の少女がいた。

 エミリーさんとテミスさんだ。

「2人とも2日ぶり」

「あ、師匠!お久しぶりです」

「久しぶりですねリュウジさん。…ところで後ろにいる方は妹さんですか?」

 テミスさんに宿屋のおばちゃんと同じ質問をしてきた。

「違うよ。この子はノン・マティスっていうんだ。ほらノン、この人たちはこの国の王女のエミリーさんと侍従のテミスさんだ」

「は、はじめまして!ノン・マティスです!よろしくお願いします!」

 緊張しているのかどもり気味で自己紹介をした。

「初めまして」

「こちらこそよろしくね、ノンちゃん。…それにしても師匠は私が言っても呼び捨てで言ってくれないのに、ノンちゃんのことは呼び捨てにしてるんですね…」

 2人ともノンの自己紹介に優しく答えてくれた。

 エミリーさんが途中からブツブツと言っていたが聞き取れなかった。

「2人に会いに来たのはさ、ノンの依頼で『ストラスフォード国』に行くことを伝えにきたんだ」

「え!?師匠!!ステルダム国にはもう戻らないのですか!?」

「違うよ。依頼を終えたらステルダム国に帰ってくるから」

 何をそんなに慌てているのかは分からないが、ステルダム国は結構気に入っているので出て行くつもりはない。

「私もついていきたいところですが…色々と予定があるので無理です。私は見ていませんが今度は無茶なことはしないでくださいね!無茶したらノンちゃんに教えてもらいます!」

「りょ、了解」

「じゃあ気を付けて行ってきてください」

「ああ。じゃあまた」

 手を振ってエミリーさんたちと別れて、出発した。

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