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王様

「そろそろいいかね?」

 低い声が俺の耳に届く。

 今の状況はエミリーさんが俺に抱きつきながら泣き、そのエミリーさんの頭を俺が撫でているという状況だ。

 止めてもらいたいならエミリーさんに言ってくれ。

 俺はエミリーさんが離れたら撫でるの止めるし。

「あ、ご、ごめんなさい!!抱きついちゃって」

「いや、別にいいけど…」

 離れてくれたのでよかった。ちなみに、エミリーさんは何故かあたふたしている。


「やあ、君とはいつか会いたいと思っていたのだ。リュウジ殿」

 低い声の鼻の下の髭が目立つおっさんが話しかけてきた。

 広い肩幅の威厳たっぷりのおっさんが。

「えーっと失礼ですが…誰ですか?」

 俺はこんなおっさんは知らない。

 俺の言葉を聞いた途端周囲の人たちが全員固まった。

 メイド服みたいなのを着ている女性まで全て。

「君は、私のことを知らんのかね?」

 おっさんが質問してきた。

「残念ながら。俺はこの国に来てあまり日が経ってないので」

「そうか、君は他国の出身なのか」

 他国っていうか他世界ですけどね。

「なら、私のことを知らなくて当然だろう。マクルス・スチュアートだ。この国の王を務めている」

 王様か。

 ん!?王様!?

 知らなかったー!当然といえば当然だよな。エミリーさんが王女で、その王女と同じ空間で同じように座っていたのなら、よく考えたらそれができるのはエミリーさんのお父さん、王様だよな。

「いやー知らなくてすいません。ご無礼致しました」

 一応謝っとかないと。

「いや、構わない。君には色々と貸しがあるからな」

「貸し?」

「エミリーが魔法を使えるようにしてくれたことと、ダンジョンからエミリーやテミスを脱出させてくれたことだよ」

「あーそのことですか。それは俺がしたいことをしただけですよ」

 別にそんなに苦労しなかった。まあ世界樹(レイン)には少してこずったが楽しかった。

「そのことで、君に何かお礼をしたいのだが何がいいかね?」

 欲しい物か…無いな。強い武器も持っているし、強い装備も持っている。

「今はないですね。欲しい物ができたときにお願いします」

「そうか。何でもいいぞ。家でも金でも何でもあげよう」

「いや、いいです…」

 規模がでかい。家はいらない。金もいらない。どうやら王様になると大事なネジが数個ぶっ飛ぶようだ。


「そんなことより!」

 エミリーさんが俺と王様の会話に割り込んできた。

「私心配したんですよ!爆発が起きた後に師匠がいなくなっていたから!」

「ごめん。でも世界樹(レイン)は倒したし、怪我もしなかったから大丈夫だよ」

「そういうことじゃなくて!!ああいう無茶なことは止めてください!」

「…はい」

 俺は素直に降参した。女性は敵に回してはいけない。

 無茶じゃないし、あの爆発は俺が起こしたことなんだけどそれをこの場で言う隙はなかった。


 その後数分エミリーさんの小言が続いた。

 エミリーさんの小言の後には王様や女王様からの質問ラッシュだった。


 疲れた俺はなんとかスチュアート家の質問ラッシュを終え、城下町に戻っていた。

 はぁ~何というか、モンスターと戦うより数倍疲れた。


「やあやア君。『この世界』の情報を知りたくないかネ?」

 路地裏から声がかかった。

 俺が無視できない単語があった。

 『この世界』の情報。

「少し、知りたいかな」

「毎度ォ!」

 返事を返してきた人物は黄土色のフードを深く被り、顔が見えなくなっていた。

 路地裏という暗い環境も影響して、より顔が分からなくなっていた。

「先にこっちから質問してもいいか?」

「どうゾ」

 俺の要望を聞き入れてくれた。

「お前は誰だ?そして、『この世界』の情報とは何を指している?」

 こいつの情報は世界樹(レイン)を倒した後に会った謎の男のように『観覧不可』になっていた。

「名前は答えらんねェな。商売上名前を晒すと、ちと危険なんだヨ」

「商売って?」

「情報屋サ。客が希望した情報を提供するかわりに、金を貰ってル」

 そういう商売があるのか。正にゲームだな。

「さっきの質問の『この世界』の情報についてお答えするヨ。『この世界』はこの世界だ。君が今いる世界サ。君が前居た世界を私は知らねェかんネ」

 こいつは今何といった?

 こいつは俺が違う世界から来たことを知っている?

「何故俺が他の世界から来たと分かった?」

「ノーコメントだネ。でも君は私にとってハ今1番大切な客だからネ。手放したくはないガ、ここはあえて答えないでおくヨ。いつか誰かから教えられるだロ」

「金を出しても?」

「無理だネ。教えなイ」

 どうやら頑なに教える気はないようだ。

「その代わリ君が『必要となる』情報を教えよウ。初回限定、今なら無料デ」

「俺が必要としている情報じゃなくて、『必要となる』情報か」

「遅かれ早かれいつか『必要となる』ヨ。情報はステータスの限界を突破する実のことだ」

 いや、今更ステータスの限界を突破しようというバカなことは考えない。

 今のままでも怪物なのにこれ以上ステータスが上がったら、魔王になっちゃう。

「その実の名は『限界突破(リミットブレイク)』ダ」


「役に立つことを願っているヨ」

 そう言ってフードの男かも女かも分からない人物は立ち去って行った。

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