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彼は生きていた

 ――数分前。

(やっぱりだめか…)

 アンは息を吐いた。

 エミリーにあの提案をしてから数分しか経っていないが、そんなことを思った。

 やはりあの場で見つけられなかったのだからあの少年のことは諦めないといけないのか。そう思ったとき。


 目の前の空間歪んだ。


 アンは柄に手をかけた。

(何だ?)

 歪んだ空間から出てきた『それ』は少しずつ実態をなしていった。


「リュウジさん!?」


 アンが待っていた人物だった。

「ん?アンさんだっけ?久しぶりです」

 隆二は呑気に言った。

「久しぶりって…大丈夫だったんですか!?あの『白い爆発』に巻き込まれたのに!」

 会うまでは生きていて欲しいと願っていても、会った途端本当に生きているのか信じられなかった。

「何で知っているんですか?まあ、あれは自分でしたことだし…大丈夫ですよ」

 確かに隆二を見れば怪我1つ負っていなかった。

 アンは驚愕してしまった。

 龍のときにもだがこの少年はどれほど強いのだろうと思った。

 そこで重要なことをアンは思い出した。

「エミリー様がリュウジさんのことを心配していましたよ?一度城に行っていただけますか?」

 聞きたいことは色々あったが、他の人も心配しているのでアンはそちらを優先した。

 今度騎士団の仕事が休みのときに聞きに行けばいいだろうと考えた。

「そうですね。じゃあ城に行くので。さよなら」

 隆二はそう言うと、手を上げながら別れを告げた。

 隆二の後ろ姿を見送りながらアンは考えた。

 何故、私よりも年下に見えるのにあんなにも落ち着いているのだろうと。

 そもそもレベルはどのくらいなのか。

 やっぱり今度買い物に誘い、そのときに聞こうと決意した。



***



 『テレポート』を使ってステルダム国城下に帰ったら、アンさんがいて驚いた。

 爆発のことを知っていたのは多分彼女が騎士団だからだろう。

 彼女の話を聞いて分かったが、やはりエミリーさんは俺を心配しているようだ。

 まああんな爆発の後に姿を消したら心配もするだろう。


 頭の中でどうやって2人に謝ろうかと考えている内に、城の門の前に来た。

 門番みたいな人がいたので話しかけてみた。

「騎士団のアンさんから言われて来たのですが…」

「名前は?」

「リュウジです」

 俺の名前を聞いた多分門番の人は眉をピクリと動かした。

「あなた様でしたか。どうぞこちらへ」

 いきなり恭しい態度になった門番に案内され城の中に入った。

 城の中は天井が高くて何もかもデカかった。

 赤いカーペットが廊下全てに敷きつめられていて高級感が漂っていた。

「ここです。エミリー様や国王様がいらっしゃるので、御無礼のないように」

 門番さんに案内されたのは1つの大きいドアだった。

 門番さんに礼を言って、ドアをノックする。

「失礼します。リュウジと申します」

 次何言えばいいんだろうと思っていると部屋の中から声がかかった。

「入ってくれ」

 低めの威厳たっぷりの声が聞こえたので中に入った。

「失礼しますー」

 職員室に入るように入室する。

 入った途端に俺の胸に何かがぶつかった。

「師匠…!!」

 それはエミリーさんだった。

 俺を強く抱きしめてきた。

「生きていて良かったです…!!」

 エミリーさんは泣いていた。

(そんなに長い付き合いじゃないけど…)

 俺は抱きしめてくるエミリーさんの頭を撫でた。

(泣き止むまで撫でたら安心するだろう)

 心配をかけてごめんと気持ちを込めながら。

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