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助けられた者の思い

 隆二が森の中で仰向けの状態でいることを知らないエミリーたち。

 エミリーたちは隆二が『白い爆発』に巻き込まれて死んだと思っており、特にエミリーは生気を失っていた。

「エミリー様。悲しいのは分かりますが、一度城に帰り国王様に無事を知らせるのが先かと」

 テミスも知人が死んで悲しくないわけがないが、エミリーの様子を見て、まずエミリーを立ちなおさせる方が先だと考えたのだ。

「…分かっています……」

 他人から見ても分かるくらいエミリーは元気が無かったのだ。


 エミリーたちはステルダム国の騎士団の馬車に乗り、ステルダム国城下に戻った。

 意外に遠く40分程かかった。

 馬車に乗っている最中にテミスやアンがエミリーに話しかけたがエミリーは首を動かすだけだった。

「では、エミリー様テミス様。私は騎士団の仕事があるのでここに残ります」

「はい。分かりました」

 アンにテミスは返事をした。

 エミリーは未だ生気を失ったままだ。

「それと、エミリー様」

 アンはエミリーに話しかけた。エミリーは首を縦に振るだけで応じた。

「わたしはこれから門番をするので、もしリュウジさんが帰ってきたらお知らせしましょうか?」

 アンの提案を聞いたエミリーは少しだけ生気を取り戻した顔でアンの手を取った。

「お願いします!師匠は必ず生きていると信じています!」

 エミリーは目に涙を浮かべながら言った。



 エミリーとテミスはその後、馬車で城まで帰った。

 その後ろ姿を見ながらアンは考えた。

 あの少年が死んだということが考えられなかった。

 龍を無傷で倒したあの少年があの爆発で死んだとは思えなかった。

 だからかアンは、あの少年が生きている前提でエミリーにあんな提案をしてしまった。

 あの提案はエミリーに少しだけでも希望を持ってもらうために言ったのか、それとも口に出すことによって自分を安心させようとしていたのか、アンにはどちらか分からなかった。もしかしたら全く別のことを考えながら言ったのかもしれない。

 リュウジさんが無事に帰ってきますように、とアンは願った。

 今度はエミリーを元気にするためと自分を安心させるために。 



 城に到着したエミリーとテミスは国王でありエミリーの父であるマクルスに無事を知らせるために、家族共有の場所であるリビングに向かった。

「おお…エミリー!!無事だったのか!騎士団からの知らせにダンジョンの近くでお前を見つけたという報告を聞いたから心配していたのだ!」

「よく…無事でいてくれた」

「あなたが無事で良かったわ」

 マクルスとエミリーの母であるセリナはエミリーを抱きしめた。

「心配をかけてごめんなさい」

 エミリーは両親と会えて安心したのか、生気がほとんど戻っていた。


 エミリーたちはそれぞれソファーに座って話した。

「どうしてあんなところにいたんだ?」

 マクルスが質問した。

「私たちのレベルが低いから師匠がダンジョンでレベル上げをしようと言って連れて行ってくれたの」

「師匠…リュウジと言ったか。そのリュウジ殿もダンジョンから逃げれたのか?」

 その質問をした途端、エミリーの表情が明らかに変わった。体を小刻みに震わせ、顔を青白くし目に涙を溜めていた。

「師匠は…私たちをダンジョンから逃がすために1人ダンジョンに残りました」

「…っ!そうか」

 マクルスはどう反応すればいいかわからなかった。

 マクルスは騎士団から現場の状況を聞いていたので隆二がどうなったかが予想できてしまったからだ。

「師匠が私たちを逃した数分後に『白い爆破』が起き、ダンジョンと周囲を吹き飛ばしました」

 エミリーは涙を流しながら語った。後ろに控えていた侍従のテミスは顔を曇らせていた。

 どんな言葉をかければいいか。マクルスとセリナにはまたしても分からなかった。

 部屋にエミリーのすすり泣きだけが響く。


 部屋のドアノブが音を立てた。

「お話中失礼いたします。エミリー様に騎士団のアンという者から言伝を預かっております」

 その言葉を聞いたエミリーとテミスは一斉にそちらに顔を向けた。

「何と言っていましたか!?」

 エミリーが血相を変えて質問する。


「『リュウジさんが帰ってきた』とのことです」

 その瞬間。2人の少女は涙を流しながら抱きしめ合った。

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