世界樹との戦闘(4)
「さすがのお前も、この攻撃には耐えられないだろう?」
レインは勝ち誇った顔で言った。
彼女の目には確実に攻撃が隆二に当たるのが見えた。
だが。
「残念。まだ許容範囲だ」
彼女の部屋の一部分が白く霞んだ。その霞んだ場所から声が聞こえた。あの少年の声が。
徐々に実態を表すそれは――
隆二だった。
「なぜ…生きている!?」
「確かにお前の攻撃は俺に当たった。だが、当たる直前に俺は『空間防御』を使ってダメージを最大限減少させた。まあ一度は地上に放り出されたが、俺には『テレポート』があるからな。すぐにここに帰って来られたよ」
レインはなめすぎていたのだ。隆二の現在のレベルは『LEVEL1920』。レインは『LEVEL300』。この圧倒的なレベルの差にレインは気づいていない。
「まさかこれほどの強敵だとは気づかなかったなぁ。だが、あの杖は何としても取り返さなければならない」
「これで終わらせよう。その方がお互いにいいだろう。」
レインはそう言って魔法陣を展開した。
「俺も奥の手を使わせてもらおう」
隆二は自分のエクストラスキル一覧を見てみる。
『エクストラスキル一覧』
『無に還し』…進化前。その他説明不可。使用後、使用1分につき10分行動不能。1分×10。限界発動時間は1回あたり1時間。呪文「全てを無に還す」
『消滅の創生』…消したステータスを他人に付与、または自分に付与できる。消した物ならば、実体化可能。現在使用不可。
(やばい。全然分からない。1つ目のスキルなんか『説明不可』って表示されているし。どんなスキルだよ。だが、2つ目のスキルは『使用不可』だから1つ目のスキルに頼るしかないが…ペナルティがきつい。1分使っただけでスキル解除後10分行動不能というのは厳しい条件だ)
隆二はエクストラスキルを見て、自分の異端さを改めて実感した。
(まあ、でも使わなきゃ分かんねぇよな)
昔から実際にしてみないと気が済まないタイプだったので、ここでもその性格がでた。
「これが今私ができる最強の魔法だ」
レインの魔法は準備が整っている。
一方、隆二は『無に還し』を選択する。
――ブオォォォォ!!
彼の体から白いオーラのようなものが漂い始めた。
彼の顔に白い線が刻まれた。
髪は黒から白に。
彼の剣『パーソンプロテクション』は刀身が黒から白に変わった。
そして、彼の目は金色に。
隆二の変わりようにレインは驚愕した。
しかし、すぐに笑みを浮かべる。
「それがぁ、お前の全力か。面白い!!お前の全力を上からねじ伏せてやる!!」
「世界樹幹合成魔法!!」
彼女の周囲に浮かんでいた世界樹の幹は合わさり、1つの巨大な幹を創生した。
先ほどの幹より10倍はありそうな直径。
「いけ!!」
彼女の合図で幹がもの凄い速度で隆二に迫る。
避けきれないと判断した隆二は剣で迎え撃つ体制になる。
――ビュォォォ!!
「全てを無に還す」
隆二のエクストラスキルの呪文を最後に、彼の剣とレインの幹が激突した。
その瞬間。ダンジョンを丸ごと吹っ飛ばすほどの『白い爆発』が起きた。




