世界樹との戦闘(2)
世界樹の枝がエミリーさんの手に伸びる。
「戦えるのが師匠だけだとは思わないでください!」
エミリーさんは杖を掲げる。
「テミス!私が隙をついて魔法で攻撃する!時間を稼いで!」
「はい!」
テミスさんは剣を構え、突進する。
「先ほど師匠が攻撃したときに気づきました。あなたは攻撃を受けても再生しますが、ダメージはくらうんじゃないですか?」
「ふん。頭は回るようじゃないかぁ」
自分の弱点がばれてもレインは余裕そうな顔をしている。
「だが、私のHPを全て削るまでぇお前が生きているかはぁ、怪しいところじゃあないか?」
確かに耐久戦に持ち込むとエミリーさんたちの敗北は目に見えている。
奴はエミリーさんたちより3倍以上レベルが高いのだ。
「よそ見をするな」
世界樹の枝を全て切り倒したテミスさんがレインを捉える。
それを横目で見たレインは追加の世界樹の枝を出す。
「きりがない!」
「テミス!下がって!」
エミリーさんの合図を聞いたテミスさんは後退する。
「炎弾!!」
魔法陣から放たれた炎の弾丸は一直戦にレインに向かった。
「ぐっ!!ぐぁぁっ!!」
直撃した炎弾の炎はレインの全身に広がった。
通常は炎弾でこれほどまでに燃えることはない。
つまり、これは属性効果だ。
世界樹であったも、元の属性は木属性だ。そして木属性の弱点は火属性。
これを利用すれば俺はこの巨木から抜け出せるかもしれない。
『ブースト』発動。
火属性『魔法纏術』
俺の体が炎に包まれる。
よし!これで後は巨木ごと燃やせば脱出できる。
***
「世界樹回復術『精霊の雫』」
隆二が巨木から抜け出す手段を得たとき、戦況は大きく変わった。
エミリーとテミスの連携によりHPを削られたレインだったが、『精霊の雫』によってほぼHPフル回復をしていた。
「うそ!せっかくHPを削ったのに!」
「弱点を知られちまった以上、これ以上戦いを長引かせるつもりはねぇよぉ?」
レインが魔法陣を出現させる。
「世界樹拘束魔法」
足元に出現した魔法陣から世界樹の枝が出てくる。
「しまった!」
エミリーとテミスは世界樹の枝に巻き付かれ行動不能になってしまった。
カツカツ…
レインの靴の音が大きくなっていく。
「最初からこうしていればよかったがぁ…まあ楽しめたからいいとしよう」
「さあ…その杖を返してもらおう」
レインが杖へと手を伸ばす――
「んがぁぁぁぁぁっ!!」
ブチィィィィ!!
隆二が『ブースト』によって強化された力と火属性『魔法纏術』を使い、強引に巨木から抜け出した。
「な!?どんな馬鹿力だ!」
レインは驚愕する。
隆二は抜け出した勢いでエミリーたちを助けに行く。
隆二は魔法一覧からある項目を選択する。
火属性 魔法武器纏術 『火剣』
隆二の剣が炎に包まれる。
「はぁぁぁぁっ!」
剣を薙ぎ払って2人の拘束を解く。
「師匠!ありがとうございます!」
「すまない!」
エミリーとテミスは隆二に礼を言う。
開放された2人を左右の脇に挟みながら隆二はレインの部屋を駆け回る。
「きゃっ!」
「おのれ…余計な真似ばかりしよって!」
隆二はレインを警戒しながら2人に話しかける。
「なあ、あいつが最初に言ってたエクストラスキルって何か分かるか?」
「エクストラスキルとは、その人しか持っていない世界に1つだけのスキルです!持っていない人も多くいますが、エクストラスキルは使えば戦況を逆転させるほどの力があると言われています!スキル表の右上にあるはずです!」
エミリーが隆二の質問に即座に返答する。
隆二は走りながら、開きっぱなしだったスキル表の右上を見る。
(エクストラスキル…あった!今は両手が塞がってて見えないが…俺がエクストラスキルを持っていることを祈るしかない。だがその前に――)
「エミリーさん、テミスさん聞いてくれ。俺はスキルで敵の位置が分かるんだ。このダンジョンの外に『メンケン・グレス』って言うモンスターが大量発生している。たぶんレインの能力だと思うが。ステルダムの騎士団と思われる集団がそのモンスターと戦っている。2人はそこに行って手伝ってやってくれ!」
「師匠は!?」
エミリーは不安そうな顔で隆二を見上げる。
「俺はレインを倒す。心配するな。必ず帰ってくる」
そこまで言って隆二はエミリーとテミスに魔法をかける。
「エミリーとテミスを『強制転移』!」
エミリーとテミスの体が消えていく。
これは転移するときに見られる現象だ。
「師匠!」
「リュウジさん!」
その声を最後にエミリーとテミスの体はこの場から消えた。
「さすがの私も、これは頭にきたよ」
レインは真剣に言う。
「2人を化け物同士の戦いに巻き込むわけにはいかないからな」
隆二も十分化け物だ。
ステータスカンストしているなら化け物と言えるだろう。
「あの杖は必ず取り返す!」
「させない!」
2人の化け物が激突した。