世界樹と戦闘開始
「報告します!シェッツルガルド付近に出現したダンジョンの新情報です。魔法研究所の職員数名を現地に派遣し、植物の枝の正体を解析したところ、100年前のグラスコー王国滅亡事件の首謀者と思われ、50年前の世界大戦時に死亡したという報告があった世界史上最凶と言われた魔道士『カウスター・クーベル』が制作した禁忌魔法『世界樹魔法』だと分かりました」
マクルスは驚愕しながらも、報告書に目を通す。
「まさか…生きていたのか!?しかし、死体は確認されたはず!!それよりも…世界樹魔法は危ない。シェッツルガルドの住民を早急に他の都市に避難させ、ダンジョンを封鎖しろ!」
部下に指示を出しながら、マクルスは考えた。
『世界樹魔法』というのは、その土地のというか世界の魔力を吸収して成長する。どれだけ世界樹が成長したかが分からない今、1番心配なのは冒険者だ。
先日、ギルドにダンジョンが発生したと伝えているため冒険者が数名ダンジョン内に侵入している可能性が高い。早急にギルドにこの案件を報告しなければ冒険者が危ない。
マクルスは立ち上がり、部下に指示を出すべく部屋をでた。
自分の娘がそのダンジョンにいるとは知らずに。
***
「ありゃぁー?てっきりお前たちの誰かのエクストラスキルが『MP吸収』かと思ってたんだがぁ。違ったかぁ」
デカい女は俺たちを見ながら言った。
「人違いなら、ここから出してくんねぇかな『レイン・プレイン』さん?」
こいつのレベルは『LEVEL300』。そして気になるのが、『世界樹魔法』だ。聞いたことがない。
やられてばっかじゃいやなので、奴のステータスを観覧して名前を調べ、挑発した。
「おめぇ…ナニモンだぁ。私の名前を知っているやつなんてそういねぇぞ?何歳だぁ?」
「16歳」
「嘘じゃぁねぇよなぁ?ということは、おめぇ他人のステータスを観覧できるスキルを持ってやがるなぁ?」
「ノーコメントで」
苦笑しながら俺は答えた。どうやら、墓穴を掘ったようだ。自分のスキルを敵に知られてしまったのは痛い。ちょっかいは出さない方がいいようだ。
「まあおめぇには用事はねぇ。私が用があるのはそこの小娘だぁ」
「わ、わたし…?」
レインはエミリーさんを指差しながら言った。
「さっきから見てたがぁ…お前のその杖…魔力を吸収してんなぁ。どこで手に入れたのかは知らねえが…返してもらうぞ。その杖は私の主のモンだ」
後半にいくにつれてレインの口調が真剣になってきた。同時にどす黒いオーラが見えそうなほどに威圧感を放っている。
エミリーさんやテミスさんはその迫力に恐怖し、足が通常じゃありえないくらい震えている。
どういうことだ。その『ケミニーホープ』は俺が作ったものだ。まさかその杖と同じものが存在しているのか?主とは一体だれだ?
「返してもらうぞ」
その間にも、レインの『世界樹魔法』と思われる世界樹の枝がエミリーさんの手に握られたケミニーホープ』に伸ばされていく。
「それを、俺が見逃すと思ったか?」
――ブチィィ!!
伸ばされていた枝を剣で斬る。
剣では問題なく斬れるようだ。
「まあぁお前が黙って見逃すとは思ってなかったがぁ…お前自分の立場を分かってんのかぁ?」
レインは驚くこともなく、ただ俺を見ていた。
「ああ。重々承知だよ。ここはお前の部屋。お前の『世界樹魔法』が常時発動している場所だ」
「そこまで分かっていて、わざわざ私にケンカを売るような行動をよくしたもんだぁ」
「そりゃあどうも。だが、俺としてはあんたとは戦いたいんだ。強そうだしな」
こいつを倒さないとここから出れねぇし。
「私もなめられたもんだ」
レインは立ち上がり、手をあげた。
「お前、この攻撃を受けたあと…生きてるといいなぁ?」
いつの間にか俺の足元に出現した緑色の魔法陣によって、俺は吹き飛ばされた。




