本格的に弟子入り決定!
「ほら、魔法を使えたでしょ?」
俺は興奮している2人に話しかけた。
「どうして私は使えたのですか!?今まで一切使えなかったのに!」
「まあ簡単に言えば、エミリーさんは決まった順番で魔法を覚えないと取得できないようになっているって感じかな」
「決まった順番?」
んー説明するのめんどい。
「普通の人なら魔導書を読んだりすると、その魔法を取得できるけど、エミリーさんの場合はその取得法は意味をなさない。その代わりに魔法を覚える順番が決まっていて、その順番通りに覚えることによって魔導書を読まなくても魔法を取得できる」
「なるほど…しかしそれなら私がステータス画面を見てその順番を知っていてもおかしくないはずなのですが…」
俺のスキル言ったほうが簡単そうだなー。
「それは俺のスキルだ。俺は他人のステータス、スキル、魔法、そして魔法取得表を観覧できる」
「それは…凄いスキルですね…」
若干引かれた。悲しきかな。この世界のステータスは向こうの世界での個人情報と同じだ。そりゃあ誰だって個人情報を見られるのは嫌だと思うけどさ…だって!勝手に視界に表示されるんだもん!普段はあんまり見ないようにしているけど、ちょっと気になるじゃん!!
「さて、エミリーさんの魔法取得法が分かったところで…これが魔法取得順を表した表だ」
そう言って俺はその表を渡した。
「変な順番ですね。途中に上級魔法が入っていてむちゃくちゃです」
むちゃくちゃ、と言ったがエミリーさんの顔はどこか嬉しそうだった。
「俺が教えられることはこれくらいかな。後は自分でなんとかしてくれ」
「え?」
…え?なぜお役御免なのに『もう帰っちゃうの?』みたいな顔をされなきゃいけない。
「魔法を教えてください!!まだ使えるようになってからあまり時間が経ってませんし!あ、あと剣技も教えていただきたいです!あ、あともう1つ。私のことは、エミリーと呼び捨てでいいので!」
いきなりのことで頭が回らないが、つまり『これから弟子としてお願いします』と言われているのだろう。
あまり人付き合いはいい方ではない。心の中では騒いでいるが、昔から俺は自分の気持ちを言葉や顔で表すのが苦手なのだ。
「まあいいよ。こっちも暇だし」
別にこのくらいならいいだろう。純粋にそう思った。最近モンスターを狩ってばかりでつまらないと思っていたから。
それにこの国との関係を持っていればいつか役にたつことがあるだろう。
「ホントですか!ありがとうございます!」
よっぽど嬉しいのかエミリーさんは頬を紅潮させて話してくる。
一方侍従のテミスさんは、あまり浮かない顔をしていた。それはそうだろう。いくら未成年であってもエミリーさんはこの国の姫なのだ。そんな人が一般人である俺を師と仰ぐのは問題だろう。
「それで師匠!どんな特訓をするのですか?」
だが、今そのことをエミリーさんに伝えても意味がないだろう。
「いや、今日はもういいよ。明日からこの場所で始めよう。16時くらいでいいかな?」
「私はその方が都合がいいですが、師匠は何かご予定があるのですか?」
その『師匠』っていう呼び方なんか恥ずいな。
「まあちょっと忙しいんだよ。冒険者はモンスターを倒さないと給料がないから」
「なるほど…では16時ですね!明日からよろしくお願いいたします!!」
丁寧にお辞儀をしてから、エミリーさんは元気よく走り去っていった。
さて、今日でこの依頼は終わりだと思っていたんだが予想より随分と長くなりそうだ。
でも、暇なよりかは幾分かはましだ。
特訓計画書みたいなの書こうかな。らしくもないことを思った。