異端の少年
ホワイトウルフのボスを倒した後、俺はギルドに向かった。
入手したドロップアイテムをストレージから出してカウンターに置く。
「これがホワイトウルフのドロップアイテムです」
それを受け取ったリンデさんとガレスさんは驚いた顔をした。
「ボス倒せたんですか?」
「え?はい」
俺が返事をすると2人は一斉に後ろを向いてぼそぼそ言っている。
話が終わったのか
「えっと…これが報酬です。ゴールド2000と下級ポーション3個です」
下級ポーションということは中級と上級もあるのだろうか?
この疑問は後で考えることにした。寝る前に考えたらいいだろう。
報酬を受け取り、今日は宿屋に帰ることにした。
***
「本当にあの坊やは何者だ?」
ガレスさんがリュウジさんの背中を見ながら言った。
「あのクエストは二つ名があるようなやつでもパーティーを組まないとクリアできないほどの難易度なんだが。ホワイトウルフのボスは攻撃力が高いうえに動きが速いくて、一方的に攻撃されるのが普通なんだけどな~」
「ガレスさんはリュウジさんのこと調べていましてけど何か分かったんですか?」
「それがな~!どこの出身かも分かんねえし、黒髪は珍しいから西の方の出身かなと思って調べたが違った。泊ってる宿屋は分かったんだが、あいつ個人の情報がなにも分からなかった」
ガレスさんは悔しそうに言った。
リンデから見てもリュウジという人物は極めて異端だった。
訓練場で見せたあの攻撃力。普通あれだけの攻撃力を出すにはそうとう高いレベルが必要なので、その時は他の国でモンスターを倒したりしているのかなと思った。
だが、『ブースト』を覚えてない時点で初心者であることは間違いなかった。
『ブースト』は強い冒険者でも必ず使う、身体強化スキルなので『ブースト』を覚えてないよいうことは初心者なのだ。
今回ガレスが腕前を見るためにわざとレベルの高いクエストを選んだ。
さすがにボスは倒せずに帰って来るだろうとリンデは予想していた。
だがリュウジは、傷1つなく帰ってきた。
最初はボスは倒しに行かなかったのかと思ったが、ドロップアイテムとして渡された中にはボスしか落とさない『ホワイトウルフの牙』があった。
ということはリュウジは傷1つなくボスを倒したのだ。
もう1つ気になることがあった。
それはドロップアイテムを出したときに使った魔法だ。
あれだけの量のアイテムを一瞬で出現させる魔法なんて見たことがない。
アイテムを小さくしてかばんに入れる魔法なら見たことがあるが、何もなかった空間にアイテムを出現させる魔法はないと思われる。
今分かっているだけでも、リュウジの異端さがよく分かる。
次に来たときにはもう少し探ろう。リンデはそう思った。