TAIC Summary Report ; JACK32 (RAIDEN) IJNAF Interceptor
以下は、1944年にサイパンで鹵獲された雷電三ニ型を米軍のTAIC (Technical Air Intelligence Center:米海軍航空情報部)が調査報告したものの抜粋である。ほぼ直訳であるため表現が若干読みにくくなっている点はご容赦願いたい。カッコ内の字句は筆者の注釈である。
おそらく試験条件や燃料の違いにより、日本での公試データや当時の米軍機よりはるかに高い性能が報告されている。このため当時の米軍が雷電を非常に優秀かつ危険な邀撃機として評価していたことが読み取れる。
また、日本で指摘されている視界や着陸性能は何ら問題視されておらず、むしろ高評価されている点が興味深い。強風と雷電の関係を米側が逆に捉えている点も面白い。
General (概要)
JACK32(雷電三二型)は400mile/hを超えるクラスに属し、JACK11(雷電一一型)の改良型にあたる。外観上は機首がJACK11よりわずかに長くなっており、エンジン・武装・防護装置が強化されている。以下のその違いを述べる。
Armor (装甲)
JACK32の操縦席後部および胴体燃料タンク後部にはJACK11に無い防弾鋼板が備えられている。この厚みはそれぞれ0.394インチ(10mm)と0.315インチ(8mm)あり、パイロットの背面全体に対して防護している。この装甲配置はF6Fと同じもので、Cal.050(ブローニング12.7mm機銃)の銃弾に対し限定的ながら防弾効果が期待できる。風防前部には3.16インチ(80mm)厚の防弾ガラスを備えているが、銃弾は貫通すると思われる。
Fuel tank protection (燃料タンク防御)
胴体および主翼燃料タンクに装甲はないが、JACK11と異なり厚いゴムおよびフェルトで覆われ防漏対策が行われている。またCO2消火装置が備えられている。CO2消火装置は自動または選択スイッチにより動作する。潤滑油タンク、水メタノールタンクに防御はない。外翼に水密区画を備え、不時着水時に浮力が得られる。
Armament (武装)
左右の翼にベルト給弾式の20mm機銃が2挺ずつ合計4挺が前方に向けて備えられている。20mm機銃には各200発の銃弾が搭載され、この数はJACK11の各60発より大幅に増加している。機銃は銃身が長い新型となっており、初速・射程も強化されている。JACK11同様、胴体にプロペラ圏内から発射する同調装置を備えた機銃はない。
Performance (性能)
搭載される火星二三型エンジンは海面高度で1875hp、高度1万7900フィート(約5400m)でミリタリーパワー1560hpを発揮する。水メタノール噴射を行った場合、高度4400フィート(約1300m)で戦闘緊急出力1940hpを発揮する。これにより、海面高度で362mile/h(約580km/h)、水メタノール噴射の場合は高度2万フィート(6100m)で最高速度435mile/h(696km/h)を発揮する。戦闘緊急出力使用時の海面高度から5000フィート(約1500m)までの上昇時間は1分、ミリタリーパワー使用時の2万フィート(約6000m)までの上昇時間は5.2分である。
Flight Characteristics (飛行特性)
タキシングと地上での操作性は非常に良い。離陸はほとんど傾かず安定している。離陸距離は短くフラップを使用せずに100mile/hで離床する。上昇力は優秀である。上昇角度が大きく速度は非常に速い。
安定性はAN-T-40に基づき試験された。8500フィート、2000rpm、210mile/h時に手放しで計測したが、動的・静的に安定している。失速特性は非常に素直で良好である。
昇降舵、方向舵の操作性は全速度域で良好であるが、補助翼は全速度域で重めであり、350mile/hを超える速度域では非常に重くなる。このため高速域ではP-51と同等な素早さでロールやインメルマンターンはできないが、通常の速度域では容易に可能である。
JACK11と同じく自動空戦フラップが装備されており、操縦桿のスイッチにより速度に応じた角度でフラップが自動的に展開する。本装置の効果は我が軍のいかなる航空機のものより優れている。
エンジンの騒音は地上、空中を問わず全速度域で断続的なノイズが非常に大きいが振動は少ない。
コックピットは一般的なパイロットに対して広く快適である。風防はFRANK(疾風)に比べ大きく幅が広く、パイロットが頭を動かす十分な空間が確保されている。このため視界はFRANK(疾風)や我が軍のF6FやF4Uよりもはるかに良好である。各種操作装置は全て手が届く位置にあり操作性は良い。
アプローチと着陸はとても良好である。着陸時の滑走も安定している。ブレーキはZEEK(零戦)やFRANK(疾風)同様、タキシングには十分であるがロックしやすく我が軍のものより慎重に操作する必要がある。
Conclusions (結論)
本機は、テストを担当した士官が操縦した中で最良の日本戦闘機である。本士官が過去に操縦した日本戦闘機は以下のものである。
ZEEK(零戦)
OSCAR(隼)
NICK(屠龍)
FRANK(疾風)
GEORGE(烈風)
JACK32の良い点は以下の通り。
1. 安定性
2. 失速特性
3. 快適性
4. 離着陸性能
5. 動力性能
6. 防御装備
7. 自動空戦フラップ
悪い点は以下の通り。
1. ブレーキ
2. 高速でのロール特性
3. 機械的信頼性の低さ
4. 短い航続距離
戦闘機としては我が軍のP-51を除くいかなる戦闘機よりも優れている。P-51に対しても格闘戦以外は同等である。
REX22 (強風二二型)
IJNAFは各種の水上機を運用しており、REXはJACKを水上機化した機体である。REX22はREX11に対しJACK32同様の改良が行われている。しかし水上機であるため、その性能はJACK32に及ばずZEEKにも劣る。
JACK21 (雷電二一型)
JACKは陸上機であるが、IJNAFは1942年のサンタ・クルーズ諸島海戦(南太平洋海戦)より艦上機型JACK21を一時的に使用している。JACK21はJACK11に艦上装備を追加したタイプと思われる。IJNAFの艦上機は短期間でGEORGE(烈風)に切り替わっており、JACK21は何らかの問題があり空母での運用が停止されたものと思われる 。




