第12話 1000kmを徒歩で歩くとか自殺
次回、旅立てるはず
「さて、咲も風呂から上がったな?」
「見ての通りな」
風呂から上がって選択した服を着、リビングに戻るとそこには。グリーと、ルベルトと、俺より先に風呂からあがらせた鈴木が座っていた。
「なんかあったのか?」
「まあ、座ってくれ」
促されるままにイスに座る。必然的に鈴木の隣となるが先程の一件は無かったこととしたので何ら問題はない。
ないったらないのだ。
机には水が注がれているコップがあった。喉が渇いていたのでそれを一気にあおる。
「(ぁ、それわたしの飲みかけ………
隣から何か聞こえた気がしたが無視する。例えそれが飲みかけであろうと、コップが鈴木の私物であろうと、気にしなければ何ら問題はない。
ないったらないのだ。(二度目)
「で?話って?」
グリーに話の先を促す。
「いやぁそれがなぁ……」
グリーは頭の後ろをかきながらなにか詰まっているものを吐き出すかのように話始める。
「いやぁ、なぁ………俺らな?帰るんだわ」
「………………おう。で?」
別にそこまで言いにくい話ではないと思うのだが。
「いや、違うんだよ。俺とルベルトは元々今日の昼に帰る設定になってるんだわ」
「………………は?」
「いやぁ、だからな?説明すると………………」
話はこうである。元々グリーは、調査のついでにルベルトと会う約束をしていた。だから調査隊ではなく直々にギルドマスターがこの地に足を運んだという訳であった。そして、この地には、魔法で転移してきているらしく、行きはグリー。帰りはグリーとルベルトの二人しか転移できないよう設定にされていると、そういう話であった。その転移の魔法は魔道具を用い、大量の魔力が必要とするため、グリーとルベルトが帰ってから即座に戻ってきて、俺らも一緒に連れていくのは無理であるという。
「というわけなんだがどうする?」
「いや。どうするもなにも選択肢をくれ。」
提示されていない選択肢を選べというのも無茶な話だ。
「だから、魔道具で咲と嬢ちゃんを転移するだけの魔力がたまるのを待つか、それともそのまま二人で此方に旅してくるか、っていう話だ。ちなみに待つ場合はに三ヶ月はかかる。まあ食料はあるから大丈夫だ。」
「あー………はいはいはいはい。なるほどね」
これは困った。ちらっと鈴木の様子を伺う。これは俺一人で決めていい話ではないだろう。
「鈴木はどうしたい?」
「えっ?わ、わたし!?」
自分指差してキョロキョロと回りをみる鈴木。
いや、おまえ以外誰もおらんって。
「わ、私は、結月君と一緒に入れれば、どっちでもいいよ………なんて……………………………///」
「…………………ぅうん。わかった。」
だからなぜいつのまにこれほど好感度が上がっているのか。皆目見当もつかな…………え、もしかして昨日の夜の一件?え?あれだけでこうなるの?
「で、どうする、咲」
「あぁいやぁそうだなぁ…………」
もう一度鈴木をみる。すると、目があって、顔が赤くなり始めた。うん。頼りにならんな。
「そうだなぁ、んじゃ、歩いてそっち行きますかね」
「ん、わかった。ではいろいろ準備してから気をつけて来てくれ。俺のギルドがあるのは『リース』ってところだ。」
「ん。おっけ」
それからは昼まで時間が無かったのでいろいろ忙しかった。グリーとルベルトは路銀をくれ、いろいろなものもくれた。森の抜けかたやアイテムの使い方を教えてくれ、この家のものは全て持っていっていいとも言ってくれた。そして、時間は流れていく。
「お、そろそろだな」
物も貰い、教えてもらえることは思い付く限り教えてもらった。余った時間で一息ついていると、グリーとルベルトの体が光だした。
「んじゃいってら」
「おう、咲も気を付けろよ」
「咲、死ぬんじゃないぞ!」
グリーとルベルトから叱咤激励を受け、背中をバンバンと叩かれる。結構痛い…………。
「次会うときはリースで、だな」
「あぁ、そうだな」
二人の体は徐々に輝きを増していき、今にも転移しそうであった。転移しそうってなんか字面おかしいな。
そして、ふと思ったのだ。
リースにいくには、ここから大きいところからちいさいところまで、色々なところを経由していかなければならないのは教えてくれた。町の名前も書いて貰っている。たしか10程あったはずである。
「なぁ」
「ん?どうした」
「こっからリースまでの距離ってなんぼよ?」
「あぁ、言ってなかったなそれは……………」
そして、二人の体の光が一際強くなり、姿形を視認できなくなると、声が聞こえてきた。
「━━━━━たしか1000キロ程だったはずだ
ヒュッ
そんな言葉を音として残し、彼らは消えていった。
なるほど。こっから1000キロか。…………歩いて1000キロ。1000キロ。1000キロねぇ。
「………………はぁ?
━━━━━舞と咲の旅が始まるまであと19時間