64話 二人の時間
目を覚ました俺の前には佐久野がいた。しかしよく見ると羽野や母さん、他にも数人いることに気が付いた。恐らくここは病室だろう。俺はいったいどれくらい眠っていたのだろうか?
『俺はいったい?』
目の前にいた佐久野に尋ねた。すると佐久野は急に俺に上から覆い被さるように抱きついたのだ。俺は恥ずかしくなって顔が赤くなった。
『あなたは私を助けて事故に遭って4日間眠っていたの。奇跡的に外傷はなくて心臓は止まっていたけど手術中に動き始めて、いつ目を覚ましてもおかしくない状態だったの。だから毎日皆でお見舞いに来ていたんだよ』
きっと碇のおかげなんだなと俺は思った。そして急に碇との会話の記憶が蘇ってきたのだ。
今佐久野は何と言った?俺は慌てて佐久野と一緒に自分の体を起こした。佐久野は驚いて俺から体を離しだが俺は佐久野の両肩を掴んで佐久野に尋ねた。
『今何日って言った!?俺は何日寝ていたんだ!?』
『新瀬君、記憶が・・・?』
『その話は後だ!俺は何日寝ていたんだ!?』
それが大きな声でそう言うと羽野が割って入ってきた。
『落ち着け!急にどうしたんだよ!?』
しかし俺の鬼気迫る表情を見て羽野はそれ以上何も言わなかった。
そして佐久野は少し怯えながら答えた。
『よっ、4日間よ』
もう4日も経っているなんて・・・・・・碇はどんなに延ばせても2週間だと言っていた。とにかく時間がない。俺はすぐに佐久野に全てのことを説明しようとした。
しかし今この大勢いる中で碇から聞いたことを説明するのは良くないと思ったのだ。
そして俺は顔を落ち着かせてから母さんの方へ顔を向けた。
『母さん、申し訳ないけど佐久野さんと二人きりにしてくれないかな?』
するとまた羽野が俺の前に出てきた。
『何言ってんだよ!さっきからどうしちゃったんだ!?皆お前のこと心配してここにいるんだぞ!?』
しかし羽野がそれ以上言うのを今度は母さんが止めた。
『羽野君、きっと何かあるのよ。出て行きましょう。他の皆さんもわざわざ来ていただいたのに申し訳ありませんがこの子の言うとおりしていただいてもよろしいですか?』
母さんはそう言うと頭を下げた。羽野はその姿を見て睨むようにもう一度俺を見た。そして俺は羽野に言った。
『お前にもあとで必ず話す』
俺は強く羽野を見つめた。すると羽野は落ち着いた表情になり俺を見つめ返すと無言のまま頷いて病室から出て行った。
全員が病室から出て行って俺と佐久野の二人きりになった。佐久野はどうしていいのかわからずただ怯えたまま椅子に座っていた。悪いことをしてしまったなと思い、少し後悔した。ただゆっくりしている時間はない。俺は佐久野に話しかけた。
『佐久野さん、驚かせてごめん・・・・・・とにかく呪いに関する大事な話なんだ。心して聞いてほしい』
佐久野は驚いた表情をしてこちらに顔を向けた。そして俺は話を続けた。
『さっきの質問に答えると俺の記憶は戻っている。そして俺は今まで碇と会っていたんだ』
『色君と!?』
佐久野は初めて声を出した。俺から出た思いも寄らない言葉に声が出たのだと思う。
それから俺は碇から聞いたことを佐久野に話し始めた。




