42話 二人の想い
私は何が起こったのかすぐに理解で出来なかった。
『ごめん。つい・・・』
色君のその声で私は状況を理解した。
『色君!?どうしたの!?』
『いや、だからつい・・・・・・ごめん・・・』
『恥ずかしいよ・・・』
しかし色君は私のことを離そうとはしなかった。でも私もこの空間の居心地の良さに離れようとはしなかった。ただ私の涙は止まらなかった。
『ねえ、どうして?どうして色君は私に関わろうとするの?だって何が起こるかわからないんだよ?』
私は涙声で色君に尋ねた。そして二人の間にの沈黙が流れた。色君は黙って何も言ってくれなかった。私はもう一度、今度は大きな声で尋ねた。
『どうして?なんで何も言ってくれないの!?』
『最初は自己紹介の時に泣いてたから気になったんだ』
すると色君が話し始めた。私は無言のまま聞き続けた。
『昼休みにお互いに自己紹介して同じ「いろの」っていう名前が凄く嬉しかったんだ。だって俺その時まで自分名前が嫌いだったから。その後他の皆から色乃が呪われてるって聞いてその時思ったんだよ。もしかしたら俺は色乃と出会って色乃を助ける為に生まれてきたのかなって』
その言葉を聞いて私は少しショックを受けた。ただ名前が同じだけで助けてくれようとしている。それについてはそんなことでと思いながら嬉しかった。でもやっぱり私の想いは一方通行だったのかな。
そう思った時色君の私を抱きしめる手に少し力が入った。
『でも今は違う。俺、色乃が好きなんだ。一緒にいて、話して、笑い合って過ごしていくうちにどんどん色乃が好きになった。だからこの先俺はどんなことがあっても絶対君を幸せにする。だから俺のことは心配しないで学校においで』
それを聞いた瞬間、私は足に力がなくなって色君の手をすり抜けてその場に座り込みさらに泣いてしまった。色君も私のことが好きだった。こんなに嬉しいことはない。そう思った。
色君は驚いて大丈夫と声を掛けてくれた。そして私はそのまま色君はまっすぐ見つめて
『私も色君が好き』
そう言った。それを見た色君は凄く嬉しそうな顔をしてありがとうと言った。無意識なのか下ろした片手を強く握り直していた。
色君が私を起こしてくれると
『じゃあ今日はもう時間が遅いからこのまま帰るね』
『うん、また明日ね』
色君は笑顔を見せると何も言わずにそのまま振り返って帰って行った。この時もっと色君を引き止めておけばよかったのだと私は何度も後悔した。
部屋に戻ると私はベッドに入って笑ったり泣いたりしていた。端から見ると凄く変な風に見えていただろう。色君と両想いだった嬉しさと、また色君に迷惑をかけてしまうのではないかという不安からであった。
でも私はある決意をしたのだ。
『葉月、私ね、好きな人と両想いになったんだよ。これからはちゃんと学校に行ってどんなに辛くても彼と一緒にいる。そう決めたんだ。葉月が知ったらもしかして焼き餅焼いちゃうかな?でもいいよね?葉月だったら喜んでくれるよね?』
私は葉月から届いた手紙を見つめながらそう言った。
それからもずっと私は色君のことを考えながら部屋で過ごしていた。明日になれば色君にまた会える。こんなに明日が来ることが楽しみに感じるのは葉月と出会った時以来ではないだろうか?
私がそうしている時に突然家に一本の電話が掛かってきたのである。




