34話 周りの不幸
しばらくすると先生と葉月が教室に戻ってきた。私は心配の目で葉月を見ていた。そして葉月は私の側に来ると
『ごめんね。突然泣いちゃって』
そう言う葉月の顔は目の周りが赤くなっていた。そして手元を見ると指に包帯が巻かれていたのだ。
『ううん、私は大丈夫。それよりはづきちゃんその手・・・』
『これ?先生がつけてくれたの。それに痛いのがなくなるおまじないもかけてくれたから大丈夫だって!』
葉月は笑顔で私にそう言ってくれた。本当はまだ痛いかもしれないのに私に気を遣ってくれていたのかもしれない。私はその痛々しい包帯の巻かれた指から目が離せなかった。
『それより似顔絵見せて!』
葉月は私にそう言った。そうだ似顔絵を描いていたのだ。私はすっかり忘れてしまっていた。私は葉月の似顔絵を今度は慎重に渡した。今度はちゃんと渡すことが出来た。そして私も葉月から自分の似顔絵を受け取った。
『わぁー、いろのちゃんじょうずー!』
葉月が大声でそう言うと先生がやってきた。
『どれどれ?先生にも見せてもらっていいかな?』
葉月が私の方を向いた。見せていいのか確認したいのだろう。私は葉月に笑顔を頷いた。
『はい!』
葉月は大きな声でそう言って先生に似顔絵を渡した。
『いろのちゃん!あたしのも先生に渡して!』
私は持っていた自分の似顔絵を先生に渡した。先生は笑顔でありがとうというと二人の絵を見た。
『二人とも上手よ!凄いわ!』
そう言われて私達はお互い顔を見合わせて照れ笑いをした。
そしてその翌日先生が体調不良で幼稚園を休んだのだ。
『今日は先生ちょっと身体が良くないからお休みしてるの』
代わりに来た先生がそう言った。
『先生どうしちゃったんだろうねー?』
『うん、昨日はあんなに元気だったのに・・・』
この時の私は自分の呪いで先生が体調不良になったことなど知るよしもなかった。
その翌日先生は何事もなかったかのように元気に幼稚園に来た。
それから私は成長とともに沢山の友達が増えていった。そしてそれと比例するかのように私と関わった人が奇妙な出来事にあっていったのである。
最初は軽い怪我や病気をしたりするだけだった。しかし日を追う毎に大きな怪我をする人が現れた。話した翌日に腕にギブスを巻いてくる人。一緒に遊んだ翌日に松葉杖をついて来た人。一週間も病気で休んだ人。そして入院した人。数え切れない人が私と関わってからそんなことを起こしていたのだ。
もちろん葉月も例外ではなく度々怪我をしたり病気で学校を休んだりしていた。しかしその度に葉月は
『私って運悪いのかな-?』
と言って笑って話してくれた。
そして小学6年生になったある日のことである。私が放課後葉月と一緒に校舎内を歩いていると、少し離れた位置から声が聞こえてきた。
『ねぇねぇあの子よ。あの子に関わると不幸なことが起こるんだって』
『なにそれ?』
『知らない?あの子に関わった人皆怪我や病気になってるんだって』
『えっ怖い。でもなんでそんなこと言えるの?』
『だってあの子だけ何もないんだよ?おかしくない?絶対あの子のせいだって』
それを聞くと葉月が怒ってその2人の元へ走っていった。
『色乃がそんなはずないでしょ!変なこと言わないで!!』
すると2人は走ってどこかへ行ってしまった。そう、この頃から私にはそういった変な噂が立っていたのだ。その度葉月が怒っていた。
そして葉月は私の元に戻ってくると
『気にしなくていいよ。たまたまだから。色乃のせいじゃないよ』
葉月は笑顔でそう言った。
『ありがとう、葉月』
『何言ってんの?私達親友じゃない!』
親友。その言葉が私にはとてつもなく嬉しかった。葉月がいてくれて本当によかったとそう思った。
しかししばらくしてある事件が起きたのだ。




