13話 呪いの謎
『や、やばいんじゃないか、これ?』
俺がゴールに向けた拳を下ろした時、羽野が話しかけてきた。
『当たってれば死ぬとこだったじゃないか!?』
『かもな』
『かもなって…お前何でそんな平然としてるんだよ!?』
それは俺にもわからない。さっきまでは動揺していたが、今は不思議と落ち着いていられた。ただ、何となくここで死ぬことはないと思ったからだ。
『挑発だよ。きっと』
『え?挑発って…』
羽野は不思議そうに俺を見た。
『今はまだ殺す気はないんじゃないかな?そう思うよ』
『本当かよ!?』
『わからない…でも、今はそう思うしかないよ』
それを聞くと羽野は黙り込んだ。
しかし、確かに不思議ではある。本当に佐久野の呪いが俺を殺そうとしているのであれば、今のが俺の上に落ちていたはずだ。だが、実際は違った。ゴールは俺の上ではなく、すぐ後ろに倒れた。
これは呪いが俺に向けての挑発だと考えるしかないだろう。もし違うのであれば、何かが俺を護ったのかもしれない。
まぁ俺にはそんな何かに護られるような何かはないと思うけど。
とにかく、このことは佐久野には黙っていないといけない。そうじゃないと彼女がこの学校から去ってしまう。しかし、誰かを通して伝わる可能性は高い。だが、こればかりはどうしようも出来ない。
一先ず羽野には口止めをしたが、全員に口止めをするための理由がない。そう悩んでいると、
『俺が全員に口止めしといてやるよ!』
そう羽野が言ってきたのだ。
『でもどうやって!?』
『理由なんて何とでもなるさ。とにかく俺に任せとけって!』
少し悩んだが、羽野に頼むことにした。羽野はこういう時に凄く頼りになるやつだ。これからも頼ることは多いかもしれないな。
そして、俺は授業が終わると担任の伊瀬に呼び出された。
『怪我はなかったか?』
『はい、後ろに倒れただけなので』
『そうか、それならいいんだが…』
伊瀬は口を濁した。何か言いたそうにしている。
俺は早く教室に戻りたかったので、
『先生、何もないならもう戻ってもいいですか?』
そう伊瀬に言って、戻ろうとする姿勢を見せた。すると伊瀬が、俺を呼び止めた。
『ま、待ってくれ。先生という立場上、こういうことはあんまり言いたくないんだが、佐久野のことなんだが…』
俺は驚いた。何故伊瀬の口から佐久野のことが出てくるのかわからなかったからだ。しかし、動揺するわけにはいかないので、
『佐久野さんがどうしたんですか?』
平静を装った。
『いや、先生も佐久野の過去は知っているんだ。』
『え!?』
思わず声が出てしまった。伊瀬はそれを見て話を続けた。




