第七話 「殺意」
瞑想を始めてから3日が経った。
この3日のうちに軽く放電の練習もしてみたが、たった3日間の成果であるが最初のころとは比較にならないくらい滑らかに力を流せるようになってきていた。
地味な修行ではあったが俺は楽しかった。
日本にいたころでは妄想でしかなかった異能の力が今この身にあるのだ。
さらにこなせばこなすほど扱い方が上手になるのが実感できるのだ。
夢中にならないはずがなかった。
そして今日もまた確固とした力を得るため、意識を内に落としていくのだった。
何一つ、予感めいたものがあったわけではなかった。
そもそもこの世界に俺が飛ばされたことに、何者かの意志が存在していたなど考えもしなかった。
深く、深く、落ちていく感覚だけがあった。
意識の最下層というのか、ここを深淵と呼ぶのか、普段ならどう頑張っても辿り着くこのとのできない場所であるのは間違いない。
何かの意志に引きずられるように沈んだその最果てにソイツは待っていた。
よぉ、会うのは初めてだな
なんだここは…おまえは誰だ…
ククク、命の恩人に向かって随分な言い草だな
恩人だと?なんのことだ?
助けてやったじゃねーか。化け物に襲われたときによ
思いあたるのは最初の放電だった。あの時の俺は力の使い方…というよりまずこの力の存在すら知らなかった。
感謝しろよ。お前、あのままだと死んでたぜ?
お前は…いったいなんなんだ…なぜ俺の中にいる?
ククク、おれだよ、お前を異世界から呼んだのは
なんだと!?どうやって…いや、なぜだ?なぜ俺をこの世界に!
なんだ何故だとうるせー野郎だな。理由なんかねーよ。ただの暇つぶしだ。退屈なんだよおれは。こんな世界で何万年と生きてみろ。することなんかもうありゃしねーんだ。
キサマ!そんな理由で俺をここに飛ばしたのか!お前の身勝手な都合で俺の生活を壊したのか!フザけるな!すぐに俺を戻せ!!
おぉ、なかなかの殺気じゃねーか。ククク、そうだ、お前、おれを殺しに来いよ!
俺を殺せたら元の世界に帰れるようにしてやるよ。
最初はお前がこの世界でどう苦しんで死んでいくのか見物しようと思っていたが
気が変わった。そっちの方が面白そうだ!おれはこの世界のどこかにいる!
探し出して殺してみろよ!!ハハハハハッ!!!
この野郎ッ!!!!!
今すぐコイツを殺してやりたかったがここは所詮俺の意識の中だ。殺すことはおろか、攻撃を加えることすらできなかった。
焦んなよ。今のお前程度がおれを殺せるわけねーだろ。
それにお前だって、ククク、結構この世界とおれの力を楽しんでんじゃねーか。
ぐっ、やっぱりこの力はお前のものなのか。なぜ俺に力を与えた?
別に狙って与えたわけじゃねーがな…
お前を呼ぶときに使った力が何故か残っちまってるようだな。どうやらお前の精神と融合しちまってるみてーだからそのままやるよ。一部とはいえおれの力だ。
鍛えてみろよ?化けるかもしれねーぜ?
クックックと、さも愉快そうに笑うソイツは続けてこう言った。
特別だ、最後に少しだけ力の使い方を教えてやるよ。
なんせお前はおれを殺さなくちゃなんねーんだからよ。
さっさと強くなってくれよ?ハハハハハ!!
言いたいことは言い終わったのか、勝手に現れたソイツは今度も勝手に消えていこうとした。
待てっ!キサマの名を教えろっ!
おれか?おれの名はシデン…
お前が来るのを楽しみに待ってるぜ…
気が付くといつもの見慣れた光景が目に入ってきた。
決して夢をみていたわけではない。アイツの言葉は一言一句覚えている。
「シデン…絶対に忘れない…必ず探し出してやる…」
煮えたぎる感情と共に奴の名を深く心に刻み込んだ。
書きたいことはすらすら書けました。笑
話が進むのが遅くて申し訳ありません。
ご意見ご感想、参考にさせていただきます。