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第五話 「心」

「ダメです禁止です!その力もう使っちゃダメです!!これ以上森を壊さないで!!!」

「す、すみません…」


驚いているのか怒っているのかその両方か、興奮状態のルナに詰め寄られた俺は謝ることしかできなかった。



「っていうかなんなの今の!?人間がこんな威力の魔法を放てるなんて聞いたこともないわ!!そもそも魔力を使った形跡が見えなかったから魔法でもないし雷属性なんてこの世界には存在しません!!あなたいったいなんなんですか!?」



めっちゃ怒られてるやん俺…いや、確かに森を吹っ飛ばしたのは悪かったけどさ…

なんなんですかと言われましても俺にもよく分からんし出ちゃったもんは出ちゃったし魔力とか属性とか知らんし、あれ?そういえばあの変な感じの体を流れるアレは魔力じゃないのか?ていうかこの子キャラ変わってるくね?あ、俺のせいか。そういえばなんで俺異世界でルナの言葉が分かるんだろう?異世界パワーかすげーな異世界さすが異世界。



「ファン!!聞いてるんですか!?」

「はい!ごめんなさい!」



ちょっとだけ思考の海に逃げかけた俺はルナの一喝で現実に引き戻された。



「もう…ほんとにあなたは不思議な人ですね…ここまでめちゃくちゃな存在は見たことがありません…人の住む世界でこんなものをぶっ放したら大問題ですよ。もっと自重してください!」

「で、でも俺はこの森を越えなくちゃならないわけで!さすがにこの力なしには…」

「だったら制御できるようになってください!!!通る道全てを破壊していくつもりですか!!!」

「は、はい…すみません…」



至極真っ当なルナの言葉に俺は反論などできるわけもなく、唯一俺に許された行動はしゅんと頭を垂れることだけであった。







猛烈に反省している俺を見てルナの気持ちも落ち着いてきたのか、幾分か冷静になって俺の破壊の跡地を観察していた。



「それにしてもこれは…すごいです。この森の木は樹齢何千年の単位で生きている木々達です。本来ならちょっとやそっとじゃ傷つくこともないはずなのに…かけらも残っていませんね。」

「うぐっ…」



ルナのストレートな物言いが胸に突き刺さる…



「あ、もう怒っているわけではないんですよ。ただ単純に驚いたというか感動したというか…これほどの力なら私はきっと…」

「あ、あの…ルナさん…?」



俺を残して今度はルナがどこかへ行ってしまったようだ。うん、ルナと俺はきっと似た者同士なんだ。もう怒ってないみたいだし、この子とは仲良くやっていけるだろう。しかし驚くは分かるけど感動ってのはいったい何のこっちゃ。



「あっと、ごめんなさい。何のお話でしたっけ?そうだ、そうそう修行でしたね!早くこの力を制御できるようにならなくちゃ!修行しましょう!」



急に興奮しだしたルナはものすごく満面の笑みで嬉しそうに俺の周りを飛び回っている。

さっきまでめっちゃ怒ってたのにこの差はなんだ?

女心は秋の空ってか?やはりまだ今の俺には理解できんな。



「そうだ、ファン。これだけ無茶をしたのですから疲れたでしょう。体力回復してあげますねっ」

「え?いや全然なんともないから多分大丈夫だけど…」

「え、うそ…あんな威力の魔法を放っておいてなんともないって…信じられない…もう私の理解の範疇を超えています…」



お、おーいルナさん?異物を見るような眼はやめてもらえませんかね?いや、確かに異世界からの異物かも知れませんがね、私の心は非常に繊細に出来ているのですよ?


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