六
ブックマーク140件越え...!?
驚いて飛び上がりました。
本当に嬉しいです。
みなさん、読んで下さってありがとうございますm(__)m
そんなある日、私の元にパーティーの招待状が届いた。
差出人は王。
あれ以来パーティーには全く参加していなかった私も、王直々の招待とあってはさすがに断ることができない。
「オーナー!」
メイドからパーティーの招待状を受け取った私は、すぐにオーナーの元へ向かった。
ダダダダッと走り、オーナーに飛びつく。
「うおっ、危ねえ!」
オーナーは私の首根っこをつかんで持ち上げた。
「お嬢、だんだんおしとやかじゃなくなってんぞ?」
オーナーは密かにクロエの将来を心配していた。
「オーナー!私とパーティーに行って!」
「ハァ?」
社交界に出ず、新しいスイーツの開発ばかりしていた私には、パートナーにできるような人が誰も思いつかなかったのだ。
「む、ムリに決まってんだろ!」
「えー、じゃあ料理長かして?」
「バッカ!」
オーナーは頭をかかえた。
いつからこんなわがまま娘に育ってしまったのか、と。
実質クロエはほとんどオーナーから影響を受けていたのだが...。
「そうだ、あいつ連れてけよ!リヒト!」
リヒトとは、クロエのパンケーキ店唯一の護衛だ。
元々はオーナーのところで働いていた。
数度、パンケーキのメニューを盗もうと泥棒に入られたことがあり、それから用心棒として雇っている。
しかし、リヒトはいつもフードを被っていて、姿を見せたことはない。
それでも、頼もしい護衛として、クロエたちには受け入れられていた。
「リヒト?なんで?」
「なんでって...リヒトはまだ若けぇだろ。お嬢の隣に立つのに合ってんのはアイツくれぇだ。」
確かに、クロエの店で働く者はベテランの料理人ばかりで、どう見ても少女のパートナーになり得ない者たちの集まりだった。
ゴツい・いかつい・デカい、の三拍子。
「って、ことでお願いリヒト!」
さっそく店に行き、リヒトに頼んだ。
「お、お嬢様?それはできかねます...」
リヒトは慌てたように言った。
「どうして?リヒトしかいないのよ...お願い!」
私は自分の武器を把握していた。
リヒトはこのお願いに弱かった。
オーナーにイタズラを仕掛けるときも、夜中にこっそり星を見にいくときも、つまみ食いがばれたときも、
リヒトはこの「お願い!」の一言で私を許してしまっていた。
一緒に星を見にいったことをオーナーにばれたときも、一緒に怒られてくれた。
しかし、今回ばかりは受け入れられない理由があった。
「私は、人前に姿を見せられないのです。
お嬢様の隣に立つのに相応しくありませんーー。」
「プリンあげるから、だめ?」
卵も貴重品なここでは、プリンは贅沢な食べ物だった。
そしてリヒトも私の作るプリンがすごく好きだ。
「お嬢様のプリンは魅力的ですが...申し訳ありません。」
「そうね、リヒトが人の集まりが嫌いなのは知ってるわ...仕方ない、ダモンズにでも頼むか。」
「だ、ダモンズ!?」
ダモンズとは、この辺りで幅を利かせている商家の息子である。
私になんどもちょっかいをかけては、リヒトに追い出されていた。
あれが、好意の裏返しなことは知ってる。
でも、親の力でなんとかしようとするダモンズに、私がなびくはずはない。
クロエも商家と揉めるのは面倒だと思っており、お客様は神様、の精神で対応していた。
ダモンズがクロエを公爵令嬢だと知ったらどうなることか。
いくら大きな商家とはいえ、公爵家の前ではアリンコのようなものだ。
そのクロエにちょっかいをかける。
知らぬが仏とはこのことである。
「だ、ダモンズはおやめください!」
「でも、他に思いつかないんだもの。あ、デブリとか?」
ちなみにデブリはダモンズの子分である。
ダモンズ同様、私が誘えばどんな用事があろうともパートナーとしてついてくることは簡単に予想できる。
ちょっと悪女顔でも、美少女に変わりはない私。
この辺りではすごい人気です。
店に迷惑をかける彼らも、まさか私に「迷惑なガキどもだなあ。」なんて思われてるとは知らない。
リヒトはまた頭を抱えた。
リヒトも他に誰も思い浮かばなかったのである。
そもそも街には、パートナーになるような作法を身につけた者は滅多にいない。
ダモンズたちも最低限のもので、クロエのパートナーになるにはおよそ全くといっていいほど足りなかった。
クロエをあのダモンズたちに渡すか、自分がパートナーになるか。
リヒトの心はすぐに決まった。
初めからあのダモンズたちをクロエに触れさせるという選択肢などなかったのである。
「....分かりました。ですが、私がパートナーであることで、お嬢様を嫌な気持ちにさせてしまうかもしれません。」
「なぜ?私はリヒトがパートナーだと嬉しいわ!」
私は全身で喜びを表現した。
正直、今の生活が気に入っているクロエは、パーティーなんて地獄と同じだった。
クルクル回ってなにが楽しいの?と。
しかし、「一緒に働いてきたリヒトとなら、パーティーも面白くなるかも?」と私の気持ちは浮上してきた。
リヒトはその言葉に眉を下げた。
リヒトは、「お嬢様の家にはどうしても伺えないので、パーティーが行われる部屋の扉の前で待っています。」と告げていた。
もちろん、王城のパーティーでフードを被った者が入れるわけもない。
リヒトはため息をつき、フードを脱ぐ決心をつけた。