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ルカはクロエが10歳、ルカが9歳のとき、公爵家の分家から養子に入った。

クロエはその頃には一人前といえる知性と品を身につけており、分家でぞんざいな扱いを受けていたルカとは天と地ほどの差が出ていた。


ルカはそれでも義父の期待に応えようと努力した。

しかし、到底クロエには遠く及ばなかった。

クロエも自分が何年もかけて見につけたものを、ルカがそう簡単に手に入れることができないことは分かっていた。

だからルカには「(そんなすぐに)できなくて当たり前です。焦らないように。」と伝えていた。

それはルカには「お前はできなくて当たり前だ。」という意味に聞こえていた。

それからルカはクロエと比べられている、見下されているという意識のまま成長していった。


そんなルカが学園に入り、姉が魔術を使えないことを知る。

ルカには希望の光に見えた。

(これで、姉上に勝てる!)

それだけを思い、魔術を学んできた。

ルカは、生家で身を守るために魔術を使っており、コントロールに長けていた。


「姉上...本当ですか.....?」

「本当よ。」

ルカは自分の掌から何かがこぼれ落ちていくのを感じた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その後クロエが魔術を使えるようになったことは一気に広まった。

マリーもさすがにクロエが本当に魔術を使えるようになったことに気づいた。

(マズイわ...なんでこんなことに...)

マリーはピンク色の唇を噛んだ。


マリーにも前世の記憶があった。

マリーの場合、生まれたときからその記憶があり、そのまま人格が形成されていた。

前世のマリーは''乙女ゲーム''というものを好んでおり、そのゲームに出てくる世界がこの世界にそっくりなことに気がついていた。

マリーはそのゲームにおける主人公であった。

男爵家に生まれたマリーは両親に可愛がられのびのびと育った。

三歳頃には魔力が使えるようになり、男爵家とは思えないほど巨大な魔力を持っていることが発覚する。

そこで15歳で学園に入学し、出会う4人の男から1人を選ぶというシチュエーションだ。


その4人の男に、エドワーズ王子とルカが含まれている。

魔力を持たない婚約者にまとわりつかれるエドワーズ王子。

クロエと比べられ育った孤独な心を持つルカ。

母に虐げられ育ったため女を信用できず、女を弄ぶ騎士ペンバー。


マリーはこの3人に会い、仲を深めることに成功していた。

最後の一人は、貴族でないことを知っていたため、マリーの興味の内ではなかった。

(顔は彼が一番だったのよね...)

マリーはこの中でも特に地位の高いエドワーズ王子に狙いを定めていた。


(もうクロエのイジメが始まってるはずだったのに...)

魔術の使えないクロエがマリーに対し暴言を吐くはずだったのである。

しかし、クロエが魔術に成功してしまった。

(そんなのシナリオになかった...!)

クロエは特にエドワーズ王子とルカが相手の場合、マリーに意地悪をするライバル的キャラクターとして出てくる。


(まあ、魔術が使えようがエドワーズもルカも私のものよね)

クロエの婚約者であるエドワーズと仲良くしていれば、必然的にクロエの嫉妬心を煽ることができると考えたのだ。



マリーはまだ知らない。


ゲームとは全く違う方向へ進んでいくことを.....


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方のクロエもマリーが自分に敵意を持っていることに気づいていた。

あれだけ睨みつけられれば、理由は分からずとも嫌われていることは分かる。

しかし、クロエは乙女ゲームなるものは知らなかった。


それよりも魔術を使うことが楽しくて仕方がなかったのである。


魔術が使えるようになったことを、使用人達はとても喜んでくれた。

クロエが努力家であることを知っていた使用人達は、その日の夜中こっそりとパーティーを開いていた。

クロエはそこに現れた。

「「く、クロエ様!?」」

使用人達はあたふたとした。

クロエは唇に人差し指を当てた。

「しーっ。」

妖艶な仕草だった。

「喜んでくれて、ありがとう。」

人数分のプリンを差し出した。

「こ、これは、ぷりん!?」

コックが驚きの声を上げた。

「みなさんで食べてくださいね。」

クロエは去って行った。


使用人一同で、感涙を流した。

ご令嬢であるクロエと使用人が仲良くしているところを、公爵などに見られれば...

そう思って今まで親密な関係を築かなかったことを後悔していた。

使用人達はクロエの話で盛り上がった。


ルカはそんな光景を目にしていた。

(....姉上....)

ルカの知るクロエではなかった。

そこにいたのは、ただの家族思いの姉だった。


ーーーーーーーーー


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