三
私はお金を貯めることを考えていた。
お金だけは裏切らない。
イマイチオーナーたち以外の人を信用できなかった。
うふふ、おほほ、と表面だけ仲良くしているようにしか思えない。
私は、今後また婚約者になり、婚約破棄された時のことを考えた。
もし、大人になってから婚約破棄されたら?
私が悪いといわれたら?
誰とも結婚できなくなったら?
家を追い出されたら?
手に職がないこと、人に誇れることが何もないことは私にはとても怖いことだった。
前世の父がいっていた。
「手に職をつけろ。そいつは裏切らない。」と。
ただ、私がご令嬢である以上、修行にでることは難しい。
そこで、思いついたのがお金だ。
お金はだいたいのことを解決してくれる。
この国では物価の変動もほとんど起こらないようで、よりお金を頼る理由になった。
「....というわけで、このプリンを売り出したいんだけど、どう思う?」
プリンは売れる。
前世の私が言っている。
甘いものは売れる、と。
ノリのいいオーナーはすぐに協力してくれた。
トントン拍子で庶民街に小さな店を構えることになり、プリンを売り出すことになった。
プリンなんて得体の知れないものが売れるのかーー
と心配に思ったが、どこかでモンタリーナ家のクロエ様(私)が関係してると噂になって、客が入るようになった。
「知っています?最近プリンなるものが流行ってるとか。」
久々に王宮に誘われたと思ったら、お茶会が行われていた。
「知ってますよ?」
「あら、いいわね、クロエ様は王子様におねだりすればいいんですから。」
「そうよね、どんな手をつかって婚約者になったのか。」
思った通り、社交界で陰口。
王子もそれを知ってながら、何も言わなかった。
クロエは、プリンの流行り具合を見るためだけに、お茶会に出ていた。
その2年後には店は大盛況となり、第二、第三の店舗も育っていた。
パンケーキも売り出し、今度はチーズに取りかかっていた。
それにしても貴族ブランドすごい....
私の噂を知らない庶民の皆様は、とりあえず貴族様の経営するリーズナブルな店として繁盛しています。
おかげさまで、ありがとうございます。
当のクロエ様が14歳の女児であることを知らない庶民の皆さんは、私が店に出入りしてもモンタリーナ家のクロエだと気がつかなかった。
16歳となった今では、街のあらゆる人と知り合いになっていた。
「あら、お嬢ちゃん。」
ちょうどお昼どきに来たのマラシアおばさん。パンケーキが大好きで、よく店に顔を出す。
「マラシアおばさん、今日も来たの!?」
マラシアおばさんは、いつもお友達を連れて食べに来てくれる。
さすがに毎日のようにパンケーキを食べるのはいかがなものか...
店に来てくれる喜びと、体調とを天秤にかけて悩む。
複雑な顔でうむうむうなるクロエをみて、店にいる客たちは穏やかな気持ちに包まれていた。
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