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十二

ワォーーーーン


夜明けの空に、遠吠えが響く。

何人かは、それがリヒトのものであることに気がついた。

牧場で眠りについていた二人も、その声に耳をピクリと動かした。

「にいちゃん...」

「オウ。ちょっくら助けに行ってくらぁ。」

眠そうに瞬きをする弟のシオを置いて、兄のロビンは外へ飛び出した。

クンっと鼻を鳴らし、匂いを嗅ぐ。

リヒトほどではなかったが、ロビンも嗅覚は発達している。

リヒトの匂いを見つけると、そのあとを辿った。



「ここか...」

辿り着いた先は、王宮だった。

門は固く閉ざされ、門番も立っている。

ロビンは塀を見上げた。

「ちッ。オレは身軽さには自信ねぇんだよ!」

愚痴をこぼしながらも、なんとか塀を乗り越えた。

「アーン?ここか。」

古くなり、使われていない建物の地下から、リヒトと...

「あ?クロエちゃんじゃねーか!」

クロエの匂いもした。

「ハッハーン。アイツとうとうやったか!」

同じ場所で働く獣人仲間のロビンには、リヒトがクロエに並々ならぬ思いを抱いていることに気づいていた。

「長かったなー。何年だ?えー、ひい、ふう、みい、...」

ロビンは三本指をおったところで、諦めた。計算は昔から苦手なのだ。

「ヨシッ。クロエちゃんがいるなら、がぜんヤル気がでるってもんよ!」

ロビンは今までにないスピードで階段を駆け下り、リヒト達の檻の前まで行った。


「...遅い。」

「クロエちゃんがいるって知ってたらよー、もうチョイがんばったな。」

ケラケラと、快活に笑った。

密室に二人きり長い間閉じ込められたリヒトは、ある意味我慢の限界でイライラとした。

「早くここを開けろ。」

「エー?オレこないだツノ切ったばっかなんだよ。無理じゃね?」

ロビンは頭についた丸くなったツノを撫でた。

「おい、それ以上馬鹿なこと言ってると...」

「あーハイハイハイ。ちょっとくれー冗談にも付き合ってくれよな。」

そういうと、少し後ろに下がり、ガキン、と檻を蹴破った。


「オオッ、寝てるな〜」

「おい...」

檻をこじ開けて入ってきたロビンに、リヒトの鋭い眼差しが刺さった。

「マテマテマテ。怒んなって。」

金具で器用にクロエの枷を外した。

「クロエちゃん、オレが抱こうか?」

ニヤッと笑い出した手を、噛みつかんばかりに威嚇した。

リヒトの髪がわずかに逆立つ。

「ヘイヘイ。冗談っすよ。オレがあんたに勝てないのは分かってんだから。」

ガキン、とリヒトの枷を、心なしかクロエのときより雑に外す。

「おい、破片がこっちに飛んだ。」

「アン?文句?助けに来たのに文句なのかよ!?」

「......」

リヒトは冷めた目でロビンを見ると、クロエを抱きかかえ、檻をあとにした。


「え、無視!?無視なの!?」

「うるさい、クロエ様が起きる。」



リヒトがクロエを大事そうに抱える姿をみて、後ろでニヤニヤ笑うこの男。

リヒトの遠吠えを聞き、危険を察知し、匂いをたどり、助けにきたこの男。

名前をロビンという。

この男は、リヒトの同僚である。

昔の仲間であったリヒトとは、長い付き合いで、偶然同じ場所へ居つくことになった。

リヒトとはまた同じようで全く違う適性を、この牧場で示していたのだった。


(あのリヒトがな〜。こんなちっちぇー嬢ちゃんに、骨抜きにされちゃうとは...)

ロビンのニヤニヤは止まらなかった。


ロビンが何の獣人か...お分かりの方なんて、まさか...?


ちなみに、ロビンは既に一回出てきてます。

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