3【旧】
当日を迎えた。
蕾を呼ぶのは蕾の両親。
俺たちは蕾を待つだけだ。
扉が開かれる。
「つぼ…」
そこにいたのは蕾じゃなく、蕾の父親だった。
「…今日の朝、蕾が亡くなりました。皆さんにはお世話になりました」
頭の中が真っ白になった。
他の事なんて、頭に入らなかった。
無我夢中で蕾の病室に走る。
「…嘘だ!嘘だ嘘だ!蕾は生きてる!」
自分に言い聞かせるように言う声は震えている。
「蕾!」
そこには心電子が止めっていて、蕾のそばで泣く蕾の母親の姿があった。
蕾は穏やかな顔で寝ていた。茫然とした。目が覚めて、おはよう!って挨拶するに決まってる。
「あの…近藤さん」
蕾を世話していた看護師がある紙を渡してきた。
「これ、蕾ちゃんから」
俺はすぐにそれを掴み、見る。
そこにはこう書かれていた。
《近どう 伸二さんへ
お兄ちゃんが見ている時には私は死んでると思う。お兄ちゃんがお母さんと話していた後から来なくなって、私はさみしかったです。
私はお兄ちゃんに会えて良かったよ。私は死んじゃうんだなってあきらめてたけど、お兄ちゃんと会って生きたいって思ったんだ。
それとね、お兄ちゃんがおたん生日会を開いてくれるって聞いてうれしかったよ。お兄ちゃんが祝ってくれるとうれしかったし、生きてるって思えた。
私はその時、おたん生日会にさんかしてるかわかんないけど、きっと楽しいと思う。あとね、私はお兄ちゃんが大好きです!
12才の佐武 つぼみより》
涙が溢れ、手紙を濡らす。
「…蕾、12歳の誕生日おめでとう」