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そんな感じで俺は退院してからも蕾に会いにいった。
「お兄ちゃん!聞いてる!」
「ああ、ごめん。聞いてなかった」
蕾は膨れっ面になる。
「ははっ、そんな顔するなよ」
現在、27歳の俺と11歳の蕾。
これからもその穏やかな時間が続くと信じていた。
「蕾」
「お母さん!」
蕾は知恵の輪を動かしていた手を止め、母親の方を向く。
その女性は俺のほうを解釈する。
俺は部屋から出ようとしたら、蕾の母親に止められた。
「あの、近藤さん。少しよろしいですか?…蕾のことですが」
蕾に聞こえないように小さく言われ、無言で頷く。
「蕾ー。私ね、ちょっと近藤さんと話すことあるから。待っててね」
「はーい」
それを聞くと、俺たちは部屋から出ていった。
※※※
蕾の母親は言いづらそうにし、顔も険しい。
どれくらいたったか。やっと、口を開くとその言葉に衝撃が走る。
「実は…蕾はもう長くないんです」
…え。
「あと、半年もしないんだそうです」
「…どういうことですか!蕾は今も元気にしてるんですよ!それにそれに!」
「近藤さん…」
※※※
それを聞いて以来、俺は蕾の元へ行くことができなかった。
仕事が前のように身が入らず、毎日毎日、ロボットのように事務的に行うようになった。
それを見ていた同僚が俺を無理矢理、病院に連れていかれた。
蕾の病室の前に来ると、微かに扉が開いていた。中を覗くと、医者や看護師、それに苦しそうにしながらも必死に生きようとする蕾の姿が入った。
それからはどうやって帰ったかは覚えてない。それよりも先程の光景が蘇る。
ふと、カレンダーが目に入った。
26日は蕾の誕生日だ。それを見た瞬間、俺は決心した。
【蕾を今までより1番感動したと思わせる誕生日を迎えてあげよう】
それから、俺は周りに協力を煽った。
蕾の事を知らない同僚たちにも手伝ってもらった。
知り合いのケーキ屋に大きい誕生日ケーキをお願いしたし、飾り付けも豪華にした。これで喜んでもらえる。