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蕾が目を覚めてからは、怒濤の勢いだったようだ。
看護師が入ってきて、その後に蕾の主治医。
幾つもの検査をして、体に異常がないか確認したらしい。
俺は会社に戻って仕事をきっちり行い、家に帰った後に蕾が目を覚ましたことの安堵や、最近気を詰めていたことが解決して、ぐっすり寝ていた。
翌日に見舞いに来たら、蕾に愚痴を聞かされた。俺は謝りながらも彼女に「お疲れさま」とか色々言った気がする。
そして、蕾は中学生になった。
蕾がわざわざ会社にやって来て、俺にセーラー服を見せびらかしてきた。
くるりと一回転して、嬉しそうに頬笑む光景に口角をあげながらも、にやにやと笑う野次たちに軽口を言った。
蕾は不思議そうに首を傾げていたが。
だけど、すぐ頬を染ながら、もじもじと体を揺さぶる。
「あ、あのね。お兄ちゃん……ちょっと耳を貸して?」
身長差があるからか、自然と上目遣いになる。心なしか彼女の目が潤んでいるように見える。
俺は蕾に合わせるように屈むと彼女は口元に手を当てて小さく言った。
「私ね。大きくなったら結婚するの」
「……は?」
頭の中が真っ白になった。直ぐに我に返ったが、何故か顔が熱い気がする。
でも、何でだ?俺は別にいやいや。あれ?
やばいな。混乱している。
蕾は言えたことに満足したのか、にこにこ笑いながら
行儀正しく、頭を下げていた。それを周りは微笑ましく見ている。
肩を軽く叩かれて、振り返ると同僚が茶化しそうだった。
でも彼は俺の顔を見て困惑している。
「お前どうした?顔が赤いぞ」
「あー!」
「おまっ、いきなり叫ぶなよっ。うっさい!」
耳をふさいで眉間に皺を寄せる同僚を気にする余裕もなく、俺は手で口を覆って溢す。
「くそっ、不意討ちくらった」
それが思いの外大きかったらしく、何かを察した様子の同僚に、今度こそ茶化された。