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24時間テレビということで書きました。
俺は近藤 伸二。何処にでもいる普通のサラリーマンだ。
そんな俺は今、病院にいる。ある少女に会いに。
「おーい、来たぞー。蕾ー」
「お兄ちゃん!」
少女ー佐武 蕾は病院で産まれて、病院で育った。心臓が弱く、普通の子供のように外を駆け回ることができない。
学校に行くことも出来ず、病院の外に出ることさえ、できないという。
別に俺は蕾と血縁関係があったり、蕾の家族と知り合いってわけでもない。
俺と蕾が出会ったのは病院だった。正確に言えば、病院の屋上だ。
当時、俺は階段から滑り落ちて、足を骨折した。丁度、大きなプロジェクトに参加出来るところで骨折したので毎日が憂鬱だった。
ある日、気分転換に屋上に来ていたところ、蕾が話しかけてきた。
「お兄ちゃん、なにやってるの?」
車椅子に乗った5、6歳位の少女が話しかけてきたので驚きながらも、これまでの経緯を話した。
「それでお兄ちゃんはどうしたいの?」
少女の問い掛けに俺は愕然とした。
「どうしたいの?」
もう一度言う少女に小さい声で答えた。
「…参加したかった」
「うん」
「憧れの人と仕事ができるって頑張ったのに…」
「うん、お兄ちゃんは頑張ったんだね」
少女は俺の頭を撫でながら、俺の話を聞いてくれた。
「…ありがとな、話聞いてくれて」
鼻声になりながらも、少女に礼を言う。
「俺は近藤 伸二。君は?」
「わたしは佐武 蕾。あと…」
指を折りながら、1、2と呟く。
「あと、6日で8才だよ」
「じゃあ、1週間後にまた会いに行ってもいいか?」
「?良いけど…どうして?」
頭の上にはてなが浮かんであり、その光景に笑いが溢れる。
「今日のお礼だ。誕生日、祝わせてくれ」
そう言うと、少女は顔を輝かせて、笑顔で言う。
「いいの!」
「ああ」
「やったー!」
無邪気に喜ぶ姿はやっぱり子供だなぁと思った。