すばく
スプーンを器用に使って、綺麗に食べ終えた神様は、そう言ってごろんと横になった。
「お前の親父は帰ってこないな。何故だ」
「さぁ」
「むむむ。腹が減る。本当にこの腹が減るというのは、厄介なのだ。ものを食っても治らない。今の正直な気持ちを言うとだな、お前を食いたくてしょうがない。まぁ、そんなことはしないが」
「虫でもいるんですかね」
「え?」
「サナダムシとか」
適当に言ってみただけだが、神様の顔がどんどん青くなっていく。
「…………驚かすな」
「いや、まぁ、無いと思いますけど」
「ま、待て。虫は私の天敵なんだ。私の元が虫に弱いからな、ど、どうすればいい」
神様はがたがたと震えだした。元々の気品のある雰囲気はどこかに消え、こちらに手を出すようにして、助けを求めている。
「さぁ、虫下しとか買ってこようかな。でもあれって売ってるものなんだろうか」
「な、なんでもいいから!」
「でも多分違うと思い」
「お願いします!」
神様があんまり言うので、自分で言ったことだし、虫下しを買ってくることにした。
外に出て、近くで、いつも行く薬局の戸を叩く。
営業時間は終わっていたが、頼み込むと、駆虫剤と書かれた薬を持たせてくれた。お店の人は、恥ずかしいのかもしれないけれど、この薬では完治は不確実だから医者に見せたほうが早いよ。と言っていたが、さすがに神様を医者に見せる訳にはいかないだろう。検査結果に、変なものが写ったら大変だ。
「ただいま、買って来ましたよ」
「そ、そうか」
薬を渡すと、何も聞かずにぱくっと食べてしまった。カプセル状の薬なのに、噛み砕き、苦そうな顔をしていたが、なんとかそのまま飲み込んだらしい。
「痛い」
そんな早くに効果が出るはずはないと思ったが、神様にトイレの場所を教えようとすると、神様の腹が、異様に膨らんでいるに気が付いた。
「暴れだした」
痛みと言うよりも、腹の中に虫がいるのが気持ち悪いのか、泣きそうな顔で神様がこちらを見る。
「妖怪の類かもしれん。どうにかしろ、わ、私は、虫が怖いんだ!」




