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私の稀有な人生

作者: 綾取り

 私の人生とは、何も無い広漠な荒野を歩いているようなものです。しかし私がひとつ足を踏み出せば、土の色は見る間に変幻し、太陽の光は波長を塗り替え、私の体さえ事毎に再構成されているのです。先程にこの荒野には何も無いと言いましたが、それはある部分では正しくあり、またある部分では間違っているのです。一歩前にはただ広漠であっただけのここが、一歩後には物で溢れ返っているではありませんか! 私はそれを日常であると認識し、また足を踏み出します。すると今度は私の前に千切れたカストリ雑誌を乱雑に繋げたような、誰から見ても奇妙だと思える人間型が現れたのです。それがやけに馴れ馴れしく私の名前を呼ぶのです。その声は嫌悪に包まれた安心と言いますか、とにかく相反する物が固く結び付けられたようなものでした。私はふと気になって、目の前の存在に問うたのです。

「何故、私はあなたの子なのですか」

 千切れたカストリ雑誌の集合体は、少しの間うんうんとうなった後に「それが道理なのですよ。ゆめゆめ忘れないで下さい」と短い言葉を残して、その形を失って消えてしまいました。

 道理。はて、道理とはどういう意味だったか。何かとても大事な意味があった気がする。それだけ私は頭で考え、一歩踏み出しました。次は私の背丈の半分程しかない積み木のお城が現れました。私はそれを見て、どうにも判断に困ったのです。壊すべきか、壊さぬべきか。結局私はあるままにしておき、一歩踏み出しました。

 一歩踏み出す毎に、ひとつ何かが現れる。それは自分で選ぶ事の出来ない選択なのです。そんな荒野でも遂に終わりが近づいてくるのが見えました。それは私の容姿をそのままに映して私の前にやってきたのです。私は今までと違う感じを覚えました。その私は確かに笑っていたのです。これまで私の前に現れた物は、生物も無生物も関係無く全てが悲しい気分を持っていました。それが、この私だけは確かに笑っていたのです。日常が非日常に変化し、私は初めてここで困惑を覚えました。気付くと、ここは生まれた時と同じく土は土色で、空は青色で、太陽は白い熱気を放出し、私の体はまっさらでした。何となく、私は忘れていた疑問を解決させた気がしました。ああこれが、これがあなたの言っていた道理と言う物なのですか。私は最後に道理に従えたのですか。思えば道理とは私の奥底にあって、それでいて私とは縁遠い物でした。私が右手をそっと前へ伸ばすと、彼女もまた同じ動作をしました。その手を握ると体温を覚えました。私は最期にひとつだけ問うたのです。「あなたは誰ですか」と言うと、彼女は四肢を投げ出して笑顔を浮かべて大声で言った!

「あなたです!」

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