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皇帝の神話  作者: まきまきぽてと
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第1話 物語の1ページ目

白い玉座は、いまや主を失い、冷たい静寂に包まれていた。

かつて全知全能を超えた神権を振るい、万物を律した皇帝神ミリル・セレントヴァイン。その胸の奥底で、宇宙の理と等価の輝きを放っていた神核が、無慈悲な女神の指先ひとつで砕け散った。黒き呪詛が神の髄まで侵食し、輝きは泥へ、神威はただの肉塊へと堕ちる。

「……ッ」

ミリルは、天上の楽園である神界から突き落とされた。

そこは人間達が住まう下界、マギラセントラルへと墜落していく最中、彼女の脳裏から過去の記憶が泡のように消えていく。己の使命も、神としての矜持すらも。

ただ、冷たい空気だけが全身を切り裂いた。

泥濘に顔を突っ伏して目覚めたとき、そこにいたのは「神」ではなかった。

記憶の欠片を失い、魂の器を空っぽにした、一人の無垢な少女だ。

白い髪の毛には白い雪がついており、前から目に入って痛みを感じるほどの猛吹雪が吹いていた

「寒い………これ…雪?」

身体を起き上がらせると右手には体温で溶ける雪がついていた

ミリルには自分が何処にいるのか分からず、何をしていたかすらも忘れてしまい、ただひたすら前に歩いていくしかなかった

(私は…何をしていたの…?それになんでこんな布面積が少ない服…?)

記憶喪失になってるとはいえ、思い出や神の知識が消えているぐらいであり一般的な単語などは理解していた


「……とりあえず…街とかあればいいんだけどな…」


ミリルは街を探すと決めると立ち上がり、氷点下の中ゆっくりと前へ進んだ


そして何時間歩いたか分からないぐらいになった時に、偶然真っ白な景色の中に光が見えた

その瞬間ミリルはその光を追うように走り、着いたところはまるで豪邸と言わざるを得ないほどの屋敷だった


「………誰か家にいるってことだよね…」


ミリルが恐る恐る入ろうとするといきなり目の前に魔法陣が展開され、砲撃に直撃してしまい髪の毛がボサボサになってしまった


「……え?…」


「誰ですか、呼び鈴も鳴らさずに勝手に入ろうとしてる不届き者は」


扉の奥から男性の声が聞こえ、その扉が開かれるとミリルと見た目の年齢では少し年上ぐらいのブロンド髪の少年が出てきた

ミリルを不審者と思っているかのように怪しそうな目をして次の魔法の準備を右手のひらで待ち構えていたが、ミリルが慌てて誤解を解こうとした


「す、すみません!呼び鈴あるの気づかなくて…家に入ろうとしたのではなく普通にその扉をノックしようかなって…入るつもりはありません!」


「そうでしたか………僕に何か用とかですか??」


「用というか…ここから1番近い街の場所を教えて欲しくて……」


ブロンド髪の少年はミリルの顔をジーッと見ると、ふんっとため息をついてとある物を渡した それはペンダントで彼が手から魔力を注ぐとペンダントから光が飛び出した


「わぁっ…何ですかこれは!」


「それは街がある方向を教えてくれる魔導具ですよ、試作品ですが近い場所であれば正確に導いてくれると思うのでそれを頼りにしてください」


「………ありがとうございます!!とても助かります!!」


ミリルは彼からペンダントを受け取ると勢いよくお辞儀し、そのまま屋敷を抜け出して外へ行ってしまった

その後ろ姿を見つめていた彼はふと思っていた


(…綺麗な白髪だな…それにしても今日は豪雪予報が出ていたのになんで外にいるのだろう……凄腕の冒険者…?でも街の場所知らないなんて…異国の者だろうか……まぁいいか。僕の姿を見て『大魔法師』ユスタルだと気づかないなんて地方出身なんだろうな)


ミリルよりも身長の低いブロンド髪の少年の名はユスタル・エデンフィール。魔法使い達の中で最高位である『大魔法師』の1人であり、史上最年少の15歳でなった天才なのである。


豪雪の中、ペンダントの導きに従い希望の目を持ちながら前へ進むミリル。


(そういえば具体的な距離や街の名前とか聞いてなかったなぁ………まぁいいか…)


ミリルが色々と考え事しながら歩いていると横から何かが走ってくる音が聞こえ、横へ振り向くと空中へ浮かぶ真っ白な者達がミリルに向かって勢いよく走ってくるのが見えた

その見えた瞬間目の前に氷の氷柱が現れ、間一髪で顔を傾け回避することが出来た


「!?…攻撃された…?」


「ケケケケ」


(……なにあの生き物…こういうのって絶対背中向けちゃいけない気がする…)


ミリルは周囲に警戒態勢を取ったが、戦えそうな武器などは持っておらず周囲もほぼ雪原である為素手で戦うしかないと判断していた


「かかってきなさい!」


ミリルが覚悟を決めてそう言った瞬間、一瞬で腕から下の下半身が氷で包まれ、身動きが取れなくなった


「………えっ?」


(何これ、一瞬で氷が…まずい…まずいこれ…力入れても壊れない……それに足の感覚がない…え?…こんな一瞬で?)


ミリルは力を入れて氷から脱出しようとしたが、その氷は強固でヒビすら入ることはなかった

目の前で敵が特大な氷の氷柱を作っている。面白そうな顔で、ミリルを確実に殺せると思っているかのように


(…諦めたくない……こんな所で死にたくない……なんで起きたばっかりなのに…私が誰なのかすらちゃんと思い出せないのに……このままやられてたまるか!!!!)


ミリルが今まで以上に腕に力を込めようとすると灰色の空に無数の赤い魔法陣が現れ、そこから炎の流星群が降り注いだ

その炎は雪原にぶつかると周囲へ一気に炎の風を撒き散らし、敵は一瞬で溶かされ雪の下にある野原の湿気っていた草も炎で乾燥しさらに高温の炎により燃え盛った


「……っ……」


「…ペンダントから救難信号が来たと思って駆けつけてみたら…精霊に狙われるなんて運の尽きですね」


「…さっきの…貴方がやったんですか?」


「……そうですよ、僕がやりました。あの程度の精霊に魔法すら使わないとは…余程死にたかったのですか?」


「…………まほう?」


ミリルの不思議そうな顔にユスタルは嘘だと言わんばかりの驚いた顔をしていた

マギラセントラルでは魔法は一般常識であり、生まれた頃から魔法は身近な存在。マギラセントラルの民で魔法を知らぬ者など生まれたばかりの赤子か生まれた時からずっと独りで社会に出ずに過ごしてきたものぐらいだろう


「…………まさか魔法を知らないのですか…?」


「はい…でもさっきのやつがまほうなのは分かりますよ!凄いですね!!精霊?が一瞬で溶けました!」


「……なんだかこのまま貴方を一人でいさせるのは危ない気がしてきました…街まで同行します」


あまりにも危険を知らないミリルを見て、命が危なさそうだと感じたユスタルはミリルに魔法をかけて手首を拘束し、ゆっくりと街の方へ歩き始めた


「……なぜ手を拘束する必要が?…」


「勝手なことをさせない為です。僕は善意で案内をしてますが貴方は善人ではない可能性がありますからね」


「…まぁお好きに…ですけど…」


ユスタルが歩いた跡を踏みつけるかのようについていく

途中で襲ってくる精霊はユスタルの姿を見るやいなやすぐに逃げ出し、戦うことなく4時間歩いてようやく街の入口にたどり着いた

まるで要塞のように壁に囲まれていて、門は厳重に管理されていた


「ここがフロイゼンの主要都市 グレイスです」


「わぁ…ありがとうございます!」


ユスタルが拘束をとくとミリルはるんるんでお辞儀をし、入口にいる門番に話しかけに行っていた

その光景を見てユスタルが帰ろうとすると門番と言い合いになっていそうな声が聞こえ、何をやってるんだ…と言っているような顔で2人の元へ寄った


「み、身分証…?」


「そうです、身分証がないと入ることは許されません」


「…貴方身分証持ってないのですか?」


「……持ってないというより…どんなものかも分からないです…」


「………相当な訳ありですか………彼女は僕が連れていきますのでここを通していただけませんか。これが僕の身分証です」


「………ん!?…まさかグレイスにいらっしゃるとは…お会い出来て光栄です。貴方様であれば通すことは出来ますが、くれぐれも注意をよろしくお願いします」


「分かっていますよ、それでは早く身分証を発行しにいきましょう」


「…え?あっ、はい!」


(…敬語使ってたし…この人って凄い身分だったりするのかな…?)


ユスタルに案内され、ついたのは役所であり中に入ると色んな服装をした人達が集まっていた

その中で皇帝神時代の服を着ていたままのミリルは浮いた存在となり、高価そうな衣服を着ているということで周りからは貴族のお嬢様かと思われていた


「すみません、彼女の身分証を発行して欲しいのですが」


「はい、それではこちらにお客様の個人情報の記入と保証人の印をお願いいたします」


「……個人情報?…」


「貴方の名前や年齢、所属ギルドや出身国とかですよ」


ミリルは名前のところに『ミリル』と書き、そこからはペンを動かさずに必死に考えていた


「………年齢は書かないのですか?」


「……いつ産まれたのか…分からないんです…名前しか思い出せなくて…」


(なにか呪いにでもかかっているのか…?)


「すみません、個室の部屋を借りてもいいですか?精神干渉の魔法を使いたくて」


「は、はい!こちらへどうぞ」


受付嬢に部屋に案内されると、ユスタルは右手をミリルの額の前に出し 魔法を唱え始めた


「……精神干渉魔法…記憶領域展開(メモリアス)


「…んっ……」


(……記憶領域はこんなに暗かったか…確かに見えるのは名前と…基本的な会話に必要な単語ぐらい……もっと奥まで…)


ユスタルが魔法の効力を高め、奥へ覗きに行こうとするとまるで重圧が全身にのしかかり、体が潰されてしまいそうなほど激痛が走るような視線を感じ取った

少しでも余計なことをしたらすぐに殺されると分かってしまうほどの恐怖を


精神干渉魔法はすぐ中断され、冷や汗をかいたユスタルがミリルのきょとんとした顔を見て荒い息を吐いていた


(なんなんだ今のは…奥へ行こうとしたら突然……とりあえずこの魔法はやめとこう…死ぬ気がする)


ユスタルは1度深呼吸をし、そのまま記入用紙に色々と書き込んだ


「あ、あの…苦しそうな顔してましたが大丈夫ですか…?私のせいで…」


「いえ、気にしないでください。それよりも本当に記憶があまりないようですね…僕が色々と手続きしておくのでなんとか身分証作れるようにはしておきます」


「!! ありがとうございます!」






















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