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プロローグ 英雄の詩
弱き者が強き者に喰われる。
喜で笑えば、哀で泣く。
剣が魔を切る。
魔が剣を砕く。
善があれば悪もある。
それは、この世界リアゼルに刻まれた揺るぎなき理。
空を渡る翼。
泥に沈む爪。
すべては同じ鎖に繋がれ、燃やすは命。
美しき理想は、遠き幻。
真実はいつだって、静かに喉元を裂く。
たとえ、どれほどの力を持とうとも。
たとえ、どれほど多くを救おうとも。
得た喜びは如何ほどか。
それでも……
足掻き続けた英雄をここに記そう。
——著者 影紡ぎの寡婦