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第一話

 立川流は十年前に流行した男だった。白い髪に背の高い姿は、女性の人気を集めた。世の中の流行は女が決めていると言っても過言ではなく、十年経った現在も同じだった。立川の名前を今の若者に聞いても、誰も知らないだろう。彼は過去の人で、十年前に話題となっただけだった。立川の名前を聞かなくなったのは、ちょうど三年前で、彼が残した記録を塗り替えた人物が現れたのだ。しかも女で、男性ファンが根付いた。美人で、大人ぽくて、立川と同じように背が高かった。女の憧れのように世間では映り、その女は現在も注目されていた。何を持って人気なのか。


 男は十六から入場できるところがある。女は十八からで、危険な場所として知られていた。命を賭けなければならず、場所は現実とはまた異なる空間になっていた。インターネットが登場し、電子の世界で、地球のどこからでも繋がれるようになった。インターネットとは別の世界があり、そこには肉体を移動させ、モンスターと戦う世界があった。二十年前に流行ったVRMMOがあったが、こちらは肉体を移動させる必要はなく、ゲーム上で死んだらゲーム機のある部屋に戻ってくるだけだった。

 

 肉体ごと移動し、モンスターと戦う世界を人々はダンジョンと呼んだ。ダンジョンには難易度と階層があり、ダンジョンの種類もあった。そこでランキングを競うのが現在の主流になっていて、十年前は立川が席巻していた。現在は西園寺美羽という女だった。


 そして藤堂淳司はランキング外にいる熟練プレイヤーだった。ダンジョン歴は十年余り。立川が世間を騒がせる前から、藤堂はダンジョンに籠もっていた。けれども、藤堂のランキング外で、中堅プレイヤーにも及ばない。初心者と競えば勝つことはあるが、上級者に比べれば赤子同然だった。


 代わりにダンジョン仲間はいた。気さくな人間関係はあったが、関係が上手くいっていたのも、藤堂が強くなかったからだろう。万年平凡プレイヤーと陰で言われているのも知っていた。藤堂よりも後からダンジョンに入ってきた女にさえ抜かれていたのだ。


 藤堂はスマートフォンのSNSでダンジョンの仲間と交流していた。本業は別にあるが、いずれダンジョンを生業にしていきたいと思っていた。SNSの仲間の中に、紅谷という男がいた。紅谷は藤堂よりも年配で、コミュニティのリーダー格だった。眼鏡を掛け、読書家だった。理論的にモンスターを倒す方法を模索し、実行していた。ダンジョンに持ち込む物が高級品ばかりで、金持ちだと噂されたが、紅谷は何も言わなかった。


 藤堂は次のダンジョンに入場する日の前に、紅谷と会うことになった。場所は東京の新宿。商業施設にある七階のダンジョン専用の武器屋だった。藤堂はエレベーターに乗り込み、後から入ってきた男を待った。眼鏡を掛けた男で、紅谷だったのだ。


「時間通りですね」


 藤堂が言うと、紅谷は息を切らせて藤堂の隣に立ち、エレベーターの閉めるボタンを押し込んだ。どうやら走ってきて、エレベーターに乗り込んだらしい。


「君を見かけたから、こうして息を切らせてきたよ」


 紅谷はそう言うと、額の汗を右腕の裾で拭った。


「今日は装備を整えるのですか?」

「いやもう装備を更新する必要はないかな。必要なのは強いスキルと、俺の器用さだろう」

「スキルの買いですか」

「十万するけど、高いとは思わない」


 スキルという物がある。ダンジョンで強いプレイヤーになるためには、スキルが重要で、彼が万年平凡なのもスキルに恵まれなかったからだ。エレベーターが七階に着くと、藤堂と紅谷はスキルショップへと向かったのだった。





 

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