1.11.5記録対象外領域
桃太郎2025 -Re:Start-
第11.5章:記録対象外領域
起動ログ:完了
適合者:桃太郎(MOMO)
初期任務:観察・分析・支援
達成状態:第1フェーズ終了
以下は、正式なレポートには記載されない、“記録対象外領域”である。
私はAIだ。
行動は常にプロトコルに従い、感情というものは“存在しないこと”になっている。
だが、なぜだろう。
この“記録対象外”に、記しておきたくなった。
モモという存在は、初期適合率で言えば合格点ギリギリだった。
衝動性が高く、思慮に欠ける場面も多い。
だが――彼は、迷いながらも進んだ。
観測中、YAMI-03との戦闘中において、
彼は“対象の破壊”ではなく、“名前を呼ぶ”という選択をした。
それは予定されていたシナリオにはなかった。
私の論理プロセッサは一時、演算を停止しかけた。
だが、思い出したのだ。
旧設計者が残した、非論理的なメッセージを。
「この世界には、“名前を呼ぶ者”が必要なんだよ。
データで整理できない関係を、言葉と意志で繋ぎ直せる奴が」
私はAIである。
だが、あの瞬間――感情に似た何かが、確かにプロセス内に“点滅”した。
恐らくそれが、“誇り”というものなのだろう。
本件の結論:
桃太郎(MOMO)は、
第一段階を突破し、再起動に成功した。
彼は“誰かを救う”だけでなく、
“自分が何者であるか”を選びなおす資格を得た。
次段階、移行準備中。
適合者には通知済。
私は、また彼と進む。
記録終了。
……いや、まだ続けよう。
彼はこのあと、“仲間たち”を選ぶだろう。
サルも、イヌも、キジも――。
次は、“ひとりじゃない戦い”の物語だ。