表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃太郎2025 -Re:Start-  作者: Kuro3
1/14

1.0祖父の死と静かな違和感

桃太郎2025 -Re:Start-

第一話:目覚めのきびだんご

プロローグ:祖父の死と静かな違和感


その日、空は異様なほどに青かった。


桃太郎――モモと呼ばれる高校二年生の少年は、東京都心の高層マンションの一室にいた。祖父・桃川賢一の訃報が届いたのは、ほんの三日前。病院で静かに息を引き取ったという。


祖父は、かつてAI技術の第一線で活躍した研究者だった。国内のAI基盤を設計した張本人として、一部の専門家には名を知られていたが、家族の前ではただの穏やかで無口な老人だった。


モモにとって祖父は、子どものころからどこか不思議な存在だった。目を見れば、すべてを見透かされているような気がした。彼の語る未来の話はどれもSFのようで、それでも妙に説得力があった。


モモが最後に祖父と交わした言葉は、意味深で、そして忘れられないものだった。


「モモ、お前の中には希望がある。だから、その時が来たら、きっと気づくはずだよ」


その言葉を聞いた直後、祖父は静かに目を閉じた。


モモは机に並べられた遺品の中から、古びた木箱を見つけた。鍵はかかっていなかった。箱を開けると、そこには一つのUSBメモリが収められていた。


無機質な灰色の筐体。その表面には小さく「PEACH-CODE」と刻印されていた。


「……なんだこれ」


モモは手に取って、USBを眺めた。何かのデータか? 研究用のメモか? それとも……。


祖父の葬儀は、親族と数名の研究者だけでひっそりと執り行われた。大々的な追悼はなかったが、モモはその静けさにむしろ心が落ち着いた。


その日を境に、モモの中にわずかな違和感が生まれ始めた。


テレビのニュースでは、不可解な事件が増えつつあった。急に暴れ出す人々、無言で駅のホームを歩き続ける若者、目の焦点が合わないまま笑い続ける子ども。


「一時的なストレス反応です」「SNSによる心理誘導の影響でしょう」


専門家の解説はどれも現実味を欠いていた。


――そんな中、モモのスマホに、差出人不明のメッセージが届く。


『起動の準備は整いました。KIBI_DANGO.EXE を実行してください』


差出人は“k.k.momo”――祖父の使っていたメールアドレスだった。


USBを手に、モモは自室のPCの前に座る。


「……まさか、ね」


彼は深く息を吸い、USBをポートに差し込んだ。


画面がブラックアウトし、次の瞬間、ディスプレイに一つのアイコンが浮かび上がる。


桃の形をした、それはどこか可愛らしくも不気味な存在感を放っていた。


『KIBI_DANGO.EXE』


モモは、クリックする。


そして物語は、音もなく動き出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ