表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

春の学校エッセイチャレンジ 

農業高校時代、大根を大量に持って帰った日の話し

作者: 恵京玖

 農業のメインイベントと言えば収穫。と言うか、収穫のためにやっているようなものである。

 さて高校一年生の時に大根作りの手伝いをしたのだ。

 何で手伝いなの? と思うが、実を言うと私は農業高校だが家政科と言う家庭科を特化したような学科だったので、他の学科に比べて農業に携わっていなかったのだ。とはいえ、普通高校の人よりも土いじりはしていたけど。


 さて大根作りだが、まず種まきを行って芽が出てしばらくしたら、間引きをする。間引きと言うのは一つの場所に三つほど種を撒いた後、しばらく育てて一番発育が良いものを残して他は取ってしまう作業である。意外と農業って残酷だよなーと思う瞬間だ。

 時々大根が二股になってセクシーな足っぽくなる事がある。これは土の中に石などが当たって、二股になってしまうのだ。

 そんな先生の話しを聞きながら大根作りをしていた。


 そうして出来た大根は結構太くて立派だった。そして一本一本が重かった。これを持って行くのは面倒だったクラスメイトは「恵京、いらない?」と言って渡して来たのだ。

 なんだか断るわけにもいかず「じゃあ、もらう」と言ったら、他の子たちも「私のもあげる」と言い出して、十数本くらい集まってしまった。

 こうして私は大根を十数本ほど持って帰る事になった。マジかよと思った。


 実を言うと私は野菜が嫌いだ。だが家は農家だったりする。そしてこんな疑問が思い浮かぶだろう。


「農家のくせに野菜が嫌いなの?」


 嫌いである。特に生野菜が嫌いだ。それからはっきり言ってそういう人って結構いると思う。知り合いの米農家の子も、朝食は米よりパンが食べたいと言っているし。


 話しはそれてしまったので、元に戻すが大根を十数本持って帰るのは恥ずかしかった。

 両手に抱えきれないくらい持って行ったので、周囲の人の目は気になる。と言うか十数本も大根を持って行く人なんて、おでんの屋台をやっているおっさんくらいだろう。十六の乙女が持って行く物ではない。

 悪い事にその日はライトノベルの発売日だった。恥を忍んで私は本屋に行ってお目当てのライトノベルを買った。その際、店員にものすごい目で大量の大根を見られてしまった。

 ここで「あ、お姉さん。大根欲しいですか? すごく新鮮ですし、無料でお渡ししますよ」と言えたらいいのだが、コミュ障なので無理だった。


 恥ずかしさいっぱいで大根を家に持って帰ると、母が「えー、こんなに持ってきたの?」と呆れていった。


「うちも大量に大根が出来ているのに」


 ……そうだよね。うちは農家なんだから、大根くらい親戚に分けるくらい作っているはずだよね……。

 こうして我が家の食卓はしばらく大根祭りとなった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
よくわかります、その気持ち。  野菜は旬になると、食いきれないくらい一気に育つんですよね。  で、家でまいどのように野菜祭りになって、さらに野菜嫌いになる……と。    大根の場合は、干してたくあん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ