4
ラウダスは彼の名を呼びながら近づく。
声に反応したのか、彼はゆっくりと立ち上がった。
そして振り向いたのだが、その顔は…
ゾンビたちと同じく、肌が腐敗して目が血走っていた。
「…!」
すぐにラウダスは銃を連射したが、効いている様子はない。
彼は忘れていたのだ…このゲームは、リアルゾンビゲーム。ゾンビものの例に漏れず、倒れた参加者もまたゾンビとなる。
そして、ゾンビとなった参加者は10秒間無敵となり、いかなる攻撃をしても殺せない。
変わり果てたセルクは、不気味に笑いながらラウダスに近づく。
そして…
「ラウダス!」
2人をまとめて切りながら、メニィは叫んだ。
同時に煌汰とミロウも、彼の方を見る。
ラウダスは銃を手放し、セルクと共にこちらを向く。
彼もまた、無残な姿となっていた。
「ああ、なんてこと…!」
メニィが悲痛な声を上げた。
「えっ…!?そうか、やられたらゾンビになるのか…!」
煌汰はルールとしてではなく、定番のお約束としてその事実を理解した。
「感染っちまったか…まあ、こうなりゃしゃあねえ!」
ミロウはメイスを構え、まとめて薙ぎ払おうとする。
「待って!」
メニィが彼を止めた。
「感染した参加者は、10秒間無敵になる…ルールにそうあります!」
「…!ちくしょう!」
何もできず立ち尽くすミロウに、2体のゾンビが迫る。
その様子を見て、メニィは悲しげな顔をしながらも薙刀を構えた。
煌汰もそれに参加しようと思ったが、2人に止められた。
「こいつらはおれたちの仲間だ。感染したからには、おれたちがやる!」
「ここは、私たちにやらせてください。あなたは逃げて。
そして、どうか…生き延びて!」
「…!」
感じるものを押さえて、煌汰は頷き、その場を後にした。
2人は挑む…同じく2体のゾンビに。
ついさっきまで、自身の味方であった敵に。
時刻は1時を回った。
ゲーム終了の7時まで、あと6時間。
元々100人いた参加者は、この時点で90人となっている。
2時間で10人が命を落とした。そう考えると、このゲームで生き残ることがいかに大変であるかがわかる数字であると言えよう。
煌汰は、小さな田んぼに足を踏み入れた。
もう随分前に放棄されたらしく、水が張っていないどころか土が乾ききっている。
同じものが4つ、「田」の字に並んでいなければ、畑と間違えたかもしれない。
そんな田んぼの中には、無数の死体が転がっていた。
言うまでもなくゾンビの死体だが、中には他のゾンビとは明らかに違う服を着ているものがいた。
頭を持ち上げて顔を見てみると、恐らくは西洋系…の外国人だった。
(参加者か…)
その目は閉ざされ、大きく開けられた口の周りには血がついていた。
考えたくはないが、自分もいつか、こうなるかもしれない。
ちなみに、田んぼの横にあった小屋の中に箱があった。
中にはナイフが入っていたが、1本しかない上に煌汰が使っているものとは形が違う。
全体が、まるで爪のように湾曲している。
(カランビット、ってやつか。普通のナイフより扱いが難しい…って聞いたことあるけど、どうなんだろう)
とはいえ、せっかく見つけたからには無視したくない。
予備兼隠し武器として、持って行くことにした。
形状からして、投げるのには使えなさそうだ。
ということは、完全近接用の武器として使うことができる。
いつものナイフを投げてしまった時に取り出して、その場を凌ぐのには使えそうだ。
もっとも、同じように扱えるかは疑問が残るところだが。
田んぼを出てすぐゾンビを見かけたので、カランビットを試してみた。
逆手…つまり刃を自分の方に向けて持つやり方には戸惑ったが、慣れればなんとかなりそうだ。
実際、最初は少々手こずったが、しばらく使い続けて気づいた頃には難なく胸を切り裂くことができていた。
これなら、そこまで不安がる必要はなさそうだ。
数分進むと、ガソリンスタンドを見つけた。
物資があるかもしれない…と思ったが、ゾンビがうようよいる。
近くに茂みがあったので、とりあえずそこに身を隠して様子を見る。
しばらく経ったが、ゾンビたちがいなくなる様子はない。というか、次々に建物の中へと入っていっている。
ふと思った…もしかして、中に誰かいるのか?
だとしたら、こんなところで隠れてはいられない。急いで助け出さなければ。
加速剤を飲んで、一気に詰めようか。
そう、思った時だった。
「…!」
建物の窓ガラスが割れ、誰かが出てきた。
窓を乗り越え、血のついた刀を手にしているそれは、ゾンビのようには見えなかった。
緊急脱出を試みたのか。だとしたら、仲間が続けて出てくるかもしれない。
そう思ったのだが、その気配はない。
そして、ゾンビの群れもまだまだいる。
奴らはすぐに彼が外に出たことを感知し、一斉に男に向かってきた。
これはまずい、今すぐ助けないと…と思った矢先、その男は華麗なる舞いを始めた。
戦闘にいるものを切り上げ、その後ろにいるものをしゃがみつつ一回転して足を切りつけ、膝をつかせたところで顔を切り裂く。
さらに続けてきた複数体をまとめて切り倒し、自分と同じ窓から出てきた1体の首を突き刺す。
そして刀を抜きつつ振り返り、後ろから来ていたゾンビの顔を刺し貫く。
まるで、さっきの自分を見ているかのようだった。
仲間が1人も外に出てこないところを見ると、もしかしたら、彼はついさっきまで1人きりで建物の中で戦っていたのかもしれない。
仮にそうだとしたら、なかなかの化け物っぷりだ。
敵を片付け、その男は日本刀を鞘に収めた。
ここで気づいたが、その顔は日本人だ。
かなり若いように見える。たぶん自分とほぼ同じ年だ。
声をかけようかと思ったら、横から声をかけられた。
「おい、そこでコソコソしてるやつ!」
声の方を向くと、一組の男女が手を振っていた。
「あなた1人なの?なら、私たちと一緒にこない?」
女のほうは、気さくに笑いかけてきた。
悪い印象はしないが、何となく嫌な予感がしたので断った。
「遠慮しとくよ」
すると、2人は「あっそ」「そうかい」と言ってあっさりいなくなった。
韓国出身の参加者、レン。
とある田舎の農家である彼は、ここまでほとんど1人きりで生き残ってきた…最初に漁った家の箱から見つけた、フレイルを片手に。
しかし、今はその傍らに1人の女がいる…名はシルト。オーストラリアの出身だ。
大学教授である彼女もまた、ここまでほぼ1人で生き延びてきた。
武器は、見た目とは裏腹に非常に強力な近接武器であるシャベルだ。
力の強い彼女は、ここまでほとんどのゾンビをその一振りでなぎ倒してきた。
そして、この2人はついさっき出会った。
レンはともかく、シルトはここまで他の参加者にまったく出会ってこなかったため、喜びを隠しきれなかった。
そんな彼女にどこか懐かしさを感じたレンは、彼女と同行することにした。
レンはシルトに、4年前に流行り病で亡くなった妹の影を重ねていたのだ。
崩壊し迷路のようになった大きな家の残骸の中を、2人は進む。
道中で現れるゾンビは、軽くあしらう。
レンはフレイルを振るい、シルトはシャベルを振るう。
時には下から振り上げ、時には顔を狙って突き、時には手を回して後ろに叩きつける。
そんな動きをしながら、2人は進んでいく。
果たして、彼らは生き残れるのだろうか。
星山龍神
出身 日本
年齢 24歳
性別 男
使用武器 日本刀
レン
出身 韓国
年齢 25歳
性別 男
使用武器 フレイル
シルト
年齢 19歳
出身 オーストラリア
性別 女
使用武器 シャベル




