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陰陽堂狂都支店  作者: ジオサイト
31/39

条件


「俺は小野家の者ではないぞ」

《我は、小野家の家臣ではない。我は、我の仕えたいもの一代に仕える》


「俺は死ぬ時に、お前を連れて行く気はしないと思うぞ」

《人とは、気が変わりやすい生き物だと、我は知っている》


「俺は、貿易商ぼうえきしょうの跡取りだぞ?」

《それが我に、関係ある、のか?》


 直志は言葉に詰まった。

 直志がその理由で駄目なら、この西洋館は何なのだ、という事になる。どうやら異文化というものは、必ずしも妖や付喪神といった『人ならざるもの』に、悪影響を与えるものでもないらしかった。


 直志は溜息を吐いた。


 直志が幾ら思案しても、それは何らかの―清蓮の?―導きで、己はそれを選ぶしか無いような気がした。


 清蓮を睨み見る。

「お前では駄目なのか」


「私は、剣術ができないのです。今後したいとも思いませぬし」


 何だか腹立たしい。


「別にこいつがやらなくとも、お前はその妖を退治できるんだろう?」


「もちろん―しかし、いささか疲れてきました。早うそこの妖を御斬り下さいませ」


 こいつから先に斬りたいと、直志は産まれて初めて思った。


「簡単に言うが、俺とこいつの一生がかかってるんだぞっ?俺が契約すれば、こいつは俺に一生仕えなければならなくなる。俺はそんな責任の重い事、したくはないっ」


 清蓮は、龍牙丸を見た。直志に視線を戻す。


「ならば―今回に限り、という事ではいかがでしょうか」

「何?」


「一生とは言わずとも、期限をつけて契約なさればどうです?」

「そんな事が―できるのか?」


《できん事も、無い》


 直志は清蓮を再び見た。


「お前は、俺が斬らん限り―退治はせんつもりなのか」

「そういう事です」


 直志は憤慨しそうになったが、それを押さえ込んだ。

 何もかもを飲み込んで、毒気を吐き出すように溜息を吐いた。


「分かった・・・ならば一日だけ、契約しよう・・・」

《我と、契約を結ぶのか?》


「ああ。一日だけぞ・・・それと―一つ条件がある」

《何だ》


「お前にではなく、清蓮にだ」


 清蓮は、意外そうに片眉を上げた。

 直志は清蓮を睨みながら言う。


「次回から、俺がお前の勤めに付いて行く事を約束しろ」


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