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陰陽堂狂都支店  作者: ジオサイト
29/39

運命の別れ道


「俺とこいつとの会話も、聞こえていたんだな?」

「ええ、まぁ―」


 清蓮の声音こわいろには、罪悪の一欠ひとかけらも無かった。


「龍牙丸には、彼方のような純心な者が必要で、彼方は妖から身を守る為、破魔の力を持つ龍牙丸が必要だった―私は最善を行ったまで。彼方が先刻言ったように、これは何かの縁で、運命さだめだったのです」


 直志は憮然ぶぜんとして言った。


「俺が龍牙丸と会ったのは、必然だったと?」


「まぁ。そういう事です・・・彼方は剣術に優れておられるのでしょう?でしたらそこにいる妖を、龍牙丸で御斬おきり下さい」


「何故?お前が退治すればいいじゃないかっ」


 清蓮はかぶりを振った。


「このまま龍牙丸をほおっておけば、何れは鬼と化し、厄介事やっかいごとを起こすやも知れません。そうなる前に処分するか、再び鬼退治をするよう改心させるか―二つに一つしかありません・・・」


「処分―って・・・」


「意思があり、愛他あいたを知る者を殺生せっしょうし罪悪を感じぬ程―私も人でなしではありません」


 直志は其れを見て、説得しろ、と言われた意に気がついた。


「龍牙丸は今ここで、選択せねばなりません」


 直志は龍牙丸を見た。

「どうするんだ?」

 龍牙丸は、沈黙のあと呟いた。

《分からぬ・・・》


「分からぬ、じゃないだろうっ。お前は今、生か死かの瀬戸際せとぎわにいるんだぞっ?」

《どちらでも―よい・・・》


「いいわけあるかっ。お前が死んだら、小野家の災厄さいやくは誰が守るというんだ?」


《知らぬ・・・》

「知らぬ、じゃないっ。ちゃんと考えろっ。このままで本当にいいのか?なぁっ」


《我は―どうすればよい・・・》

「だから、それを考えろっ。お前は神の子孫を好いているのか、いないのかっ?」 


 龍牙丸は暫しの沈黙の間、過去を振り返った。先代の当主達と契約を交わした時の記憶が、瞬時に思い出される。


《可愛ゆいと、幾度思うたか・・・》


 地の底から込上げてくるような、慈愛の声だった。


「じゃあ」

《しかし―幾度となく、裏切られた事か・・・》


「裏切る?先代達が?」

《皆約束を破り、我を置いて―く・・・》


「約束・・・?」

《我との、契約・・・家督かとくを持つ者と交わす、密なる夢通い。我は家を守り、契約者を守る・・・》


 直志は眉間を寄せた。


「血筋は?」

《我の守るは血筋ではなく、契約者と、その家一代のみ―》


 直志は驚いて、瞳と口を開いた。


「では、今まで小野家に仕えていたのはっ」

《代々と、家督変わる時々に―我は契約を、した》


 直志は、視線を秀晴に向けた。


「秀晴兄さん、兄さんは龍牙丸と契約を交わしたのかっ?」


 秀晴は、困惑して眉間にしわを寄せた。


「契約?―何の事だ・・・?」


「龍牙丸、秀晴兄さんとの契約は果たされていないのか?」


《あの者との契約は、すでに、済んでいる・・・》


「済んでる?秀晴兄さん、やはり契約したんじゃないのか?」


「いいや・・・していないぞ?」


 直志は訝しんで、龍牙丸へと視線を戻す。


《あの者が、忘れているだけのこと・・・我は、常人との会話ができぬ、故、夢で契約を交わす。あの者は、我が半身と、契約を結び、守りし者、と決まって、おる・・・》 


(半身?碧さんが持っている方の事か?)


「秀晴兄さん、夢で龍牙丸と話をした?家督を継いだ日に―」


 秀晴は首を捻り、「うー・・・ん?」と唸った。


《契約の、内容は、我が契約者の一生を、守りし代わり、その一生を終える時、我を砕き墓中に添える事、であった・・・》


 直志は目を見開いた。


「やはりお前は、共に死にたかったのだなっ?」

《そうかも、しれぬ・・・》


 直志はその一途さに、胸が痛んだ。


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