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陰陽堂狂都支店  作者: ジオサイト
25/39


 直志の頭の中で、青年の声がした。


《我、を、呼ぶな・・・》

(え?)


《何故、我、を呼ぶ・・・》

(力を貸して欲しいんだ)


 掠れた声が、無機質に応える。


《力、を求むる事は、破壊を求む事、と、同等の意、か?》


(違う。俺はただ、守りたいだけだ。あの二人と、俺の命を)


《守る―守る?小野家の、末裔、を?》

(そうだ。力を貸してくれ)


《我、は、守りたくない》

(お前は小野家の守護神じゃないのか?)


《我は、小野家の守護神、也・・・否、もはや守護神ではない》


 ―どういう意味だ?


(お前が、付喪神でなくなった事を言っているのか?)

《我は、契約、により、縛られし者、也―》

(それは・・・付喪だった事と関係がない、って事か?)


 龍牙丸は、それには答えず、続けた。


《小野家、の末裔、は、力を求む、の、か》


 力とは破壊を求む事だと、直志は思っていなかった。


(違う。助かりたいだけ、生きたいだけだ)


《生、きる・・・生を、求むる事、即ち、他者を、虐げる事》

(違うっ。誰かを虐げたいわけじゃない)


 しかし、結局はそうかもしれない・・・霞だけを食し、生きているわけではない。

 龍牙丸はまた直志の答えを無視し、囁くように殺気を出す。


《お前、は、何奴なにやつ、だ・・・》

(日向直志、小野家の末裔の友人だ)


《お前、は、我を、如何、いたす、気、だ》

(だから、力を貸して欲しいんだと言っているだろうっ)


《何故、末裔を、助けたい》

(生かしたいからだっ)


《何故、生かしたい》

(何故?そんな事知るかっ、生かしたいから、生かしたい。それだけだっ)


 龍牙丸は暫し沈黙する。


《我、を使用する事、すなわち、我と、契約を結ぶ事、也・・・我、と契約を結ぶ者、即ち、我の、主人と成りうる者、に、限る》


(今の状況が分かっていないのか?見ろ、目の前に何がいると思ってる?お前の敵、小野家の末裔を殺そうとする、お前の敵だっ。そんな屁理屈言っている場合かっ?)


《我の―敵・・・》


(そうだっ、ひとときでいい。力を貸してくれっ。秀晴兄さんは剣術ができないし、碧さんはか弱き娘っ。この場でお前を活かせるのは、俺だけだっ・・・頼む。今だけでいい)


 龍牙丸は、直志の目を通して、棘鎌を持った女を見た。


《おに・・・》


(そうだ、鬼だ。お前は昔、鬼退治をしていたんだろう?ならば力を貸し、小野家を守ってくれよっ) 


《鬼・・・》

 沈黙がある。

《お前、は、鬼を退治する事、を、望む、か》


(ああ。望むっ)

《我、を使用し、鬼を退治する事を、望む、のか》

(ああ。そうだっ) 

《我と、契約、を望む、のか》


 直志は少し考える。


(契約すれば、俺はお前の主人になるのだろう?)

《そう、だ》


 直志はやはり少し考えた。


(それは望まない。俺は今、助かりたいだけだ)

《何故、今、助かりたい・・・先、は望まぬ、の、か》


(先を望むのと、今を望む事とどう違う?どうしてお前は、小野家の守護神でありながら守護する事を支離しりごむんだ?)


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