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兵器な少女  作者: 哀上
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4話 寮

4話 寮

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 ふぅ、なんとか乗り切った。

 一限目の国語こそ躓いて、こんな調子で一日大丈夫なのかとも思ったがそれ以外は結構どうってことなかった。


 心配していた社会も、授業を聞く分にはなんら問題なかった。

 教師に指され発言することになったとしても、問いの答えを教科書か直前の教師の発言から見つける簡単な作業だ。

 たまに「ん?」って思うところこそあれ、何も見れない状態で記述を求められるようなテスト以外なら案外どうってことなさそうで少し安心した。


 と言うわけで授業は問題なかったのだが、休み時間のたびにクラスメイトに囲まれ質問攻めにされるのだけはどうしようもなかった。

 一応自分が彼らの注目を集めていることは自覚してたので、休み時間にトイレに行くなり教師に事業内容の確認をしに行くなりしていたのだがあまり効果があったとはいえない。


 何をするにしても、周りにわらわらと着いて来やがる。

 周りにいるクラスメイトを無視して教師に質問するって言うのもなんかアレだし、そもそも教師も答えにくいだろう。

 落ち着いてトイレにも行けなかった。


 連れション文化って、女の子に存在するんだね。

 存在自体は知ってた。

 軍の男どもが談笑しながらトイレに行くのなんて意識していなくても目に入ってくる光景だし、なんなら異性を意識されていない基地の作りではその中の様子まで丸見えだったりする。

 でも、女同士でも存在するとは思ってなかった。

 だって、個室じゃん。


 授業間の休み時間でもそんな状態だったのだ、時間制限のない放課後に捕まるわけにはいかない。

 どれほどもみくちゃにされることか……


 特に女子、同性同士だからか奴らだんだんと遠慮がなくなってきて同じトイレに入ろうとしてきたりペタペタ体を触ってきたり。

 別に不快ってわけじゃないけど、くすぐったい。

 それが普通なのかもしれないが、私は慣れていないのでご遠慮願いたいのだ。


 もう色々疲れたし、私はさっさとベットで眠りに落ちたい。


 ……そういえば、私の部屋てどこなんだろう?

 博士の話ではこの学校の量に住むってことらしいけど、聞いてない。

 まぁ、教師にでも聞けばいいか、多分担任なら知ってるでしょ。


「じゃあ、今日は予定あるから」


 そう言ってさっさと教室を出る。

 長々と話してると捕まり気がするし、何事もシンプルに限る。


「リーリア、今日転校してきたばかりだもんね」


「……残念」


「明日は遊ぼうね」


 あれ、意外と素直。


 名前の知らないクラスメイトたちが、名残惜しそうに手を振っている。

 いや、私は酷くないからね。

 あんな乱雑な自己紹介で覚えろってのは無茶だし、その後も周りに人が多すぎて一人一人把握するのは早々に諦めた。


 一応振り返しておいたほうがいいだろう。

 まだ馴染めそうにないけど、別に孤立したいわけじゃない。

 名前の方は……またおいおいだね。


「あ、待って」


「ん?」


 颯爽と教室から逃走しようとしたら、誰かに呼び止められた。


 無視は感じ悪いよね。

 ってな訳で半身で、ちょっとづつ進みながら一応聞く気はありますよとアピールだけしておく。


「リーリアちゃん、寮どこの部屋かとか聞いてる?」


 あ、その話か。

 なら別にいいか。

 振り返ると、見覚えのある顔だった。


 たしか、ヴィーナとか言う名前だったはず。

 初めに私に話しかけて来てくれた子だし、今も私を心配して話しかけて来てくれたのだろう。

 結構面倒見がいい子なのかもしれない。


 ちなみに、私が今日覚えた名前はヴィーナとマイケルの2人だけだ。


「うんん、今から先生のところにききに行こうと思ってたとこ」


「そっか、じゃあ一緒に行こうよ」


 なぜに?

 まぁ、別に断る理由もないしいっか。

 職員室も今日朝一回通りかかっただけだし、案内してくれると言うならありがたい。


 やっぱり面倒見のいい子なんだろうな。

 ありがたや。

 よくよく見ると、私に向けられている笑顔が天使のように見えて来た。


「こっちだよ」


 そう言われ、手を引かれる。

 柔らかく温かい手だ。


 手を繋ぐのはこれで2回目だけど、初めの時は周りを同い年の子供に囲まれてるって特殊な状況のせいであんまり手の方に意識がいってなかった。

 博士のように薬品でボロボロになった手でも、軍の男どものようにゴツゴツとしたものでもない。

 これが、子供の手……


 私の手、おかしく思われてたりしないだろうか。

 ちょっと心臓がドキドキして来た。

 あ、別に恋の目覚めとかそう言うやつではない、ただバレないかどうか心配なだけだ。


 私の体は優秀だ。

 人に比べて、強度が桁違いなのだ。

 想定されている使用用途のため、見た目でバレることはないし多少の接触も問題にはならないはずではある。

 でも、絶対ではない。


「失礼します」


 結局、何事もなく職員室に着いた。

 その間私は彼女に手を引かれながらバレないかずっとドキドキしていた。


 顔真っ赤にしていたせいか、やけに周りの視線を集めてしまった気がする。

 口笛とか聞こえてきたし。

 流石に恥ずかしい。


 ヴィーナはまるで気にしてない様子だったけど、きっとこうやって手を引くのも慣れているのだろう。

 もしかしたら、妹とか弟がいるのかもしれない。


 ……私も姉がいたらこんな感じだったのだろうか?


 担任は私を見ると、すでに準備してくれていたのだろう鍵と封筒を渡してくれた。

 なぜかヴィーナが受け取ってたけど。

 教師から見てもそう言う扱いに見えます?


 なんか放課後になってさらにどっと疲れた気がする。


 彼女は少し鍵を眺めて呟いた。


「やっぱり、私と同じ部屋だ」


 つぶやいた。


 ……え?

 同じ部屋!?


「同じ部屋? と言うか、寮って相部屋なの!?」


「……嫌だった?」


 不安そうな顔でそう聞いてくる。

 嫌ってことはない。

 ただ、不都合があるってだけで。


 それならそうと事前に知らせておいて欲しかった。

 荷物に紛れ込ませて、銃やらナイフやら色々持ち込んでしまったのに。


 いや、そんな物学園に必要ないってことぐらい理解しているんだけどね。

 どうしても手放せなかったのだ。

 それこそ物心ついた時から触っていた、手に馴染む物だったから。

 ないとどうも落ち着かない。


 別におかしくないよね?

 多分、私と同じぐらいの歳の子が人形がないと寝れないって言うのと同じようなもの。

 ……同じ、だよね?


「うんん、今初めて知ったからちょっと驚いただけ」


「そっか。前の学校は寮じゃなかったの?」


 寮、

 寮と言えば寮か?

 少なくとも、自分の家でないことは確かだ。


 私は実験体だからね。

 任務以外で基地の中から出ることは滅多にないし、当然1人部屋だ。

 まぁ、カプセルみたいな部屋と呼んでいいのか迷うものだったけど。


 それもいつの間にか普通の部屋に変わっていたが。


「前も寮だったけど、1人部屋だったから」


「へぇ、そうなんだ。2人部屋でも少ない方だし、珍しいね」


「そうなの?」


「うん」


 そう言うもんか。


 よく考えてみたら、軍の男どもは普通に相部屋だったような気がする。

 イビキがどうだとか歯軋りがどうだとか、そんな愚痴を小耳に挟んだ覚えがある。

 それこそお偉いさんぐらいしか1人部屋じゃなかったのかもしれない。


 なるほど、価値観がずれてたのか。

 普通は複数で共同生活をするものなのか。


「ここが私たちの部屋だよ」


「へぇー」


 普通だ。

 というか、どこか既視感すら覚える。

 多分基地と同じ方法で建ててあるのだろう、少し見た目に気を遣ってはあるが大枠は変わらない。


 この部屋以外にも周りにドアがたくさん並んでいる。

 間隔も結構狭し、多分ワンルームだな。

 もうちょっと豪華なのを想像してたから、逆にびっくりした。


「あ、ちょっと待って」


「なに?」


 私がそのまま部屋に入ろうとすると、ヴィーナに止められた。


「私、やってみたいことがあったの」


「?」


 そう言うと、彼女は1人部屋に入ってドアを閉めた。


 ……あれ?

 私の鍵彼女が持ってるし、もしかしてこれ締め出された?


 嘘でしょ……


 そんな嫌われるようなことしたかな?

 と言うか、やってみたいことが締め出しって悪魔だ。

 いや、天使は悪魔より多くの人を殺しているって言うしやっぱり天使だ。


 1人扉の前であわあわしてると、ドアが開けられた。

 中から、ヴィーナがひょっこりと顔を出す。


「お帰りなさい、リーリアちゃん」


「……ただいま」


 ただいまなんて、初めて言った。


 と言うか、これ……

 ちょっと、いやだいぶ恥ずかしいかもしれない。


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