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兵器な少女  作者: 哀上
20/27

20話 結論

20話 結論

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「随分と面白い顔をしているな」


 博士がからかい気味にそう言って来た。


 思考の海に沈みかけていた私の意識が引き上げられる。

 どうやら少し考えすぎちゃってたみたいだ。

 でも、それだけ衝撃的だったのだ。


「てっきり処分になるものだとばかり思ってて」


 普通にそう思い込んでいた。

 まさかこれだけのことをしでかして、処分されない所か、普通に学園に通い続けることになるなんて。

 そんなの想像もしていなかった。


 だって、ねぇ……


「それは当てが外れたな。しばらくはまたあの学園で暮らすことになる」


「人を殺したのにですか?」


 そう、私は人を殺したのだ。

 人を殺すことに何の抵抗もないのと、人を殺すことを何とも思わないのは違うと思う。

 少なくとも私は、人を殺すことがかなりの凶悪犯罪に当たる悪事だとは思っている。


 それを、学園に。

 貴族とか金持ちの、上流階級の子供ばかりの学園じゃなかったっけ?

 そんなところに、こんな犯罪者がいていいわけないと思う私の思考回路は間違っているのだろうか?


「そんなの、どうとでもなる。適当に揉み消しておくさ」


「揉み消すって……」


 そんなの、どうやって?

 博士は多分それなりの地位と影響力がある人だとは思う。

 でも、所詮はそれなり、ただの研究者でしかない。


 天才で、成果が色々認められていたとしてもだ。

 そう言うことを押し通せてしまえるような、言って仕舞えば貴族みたいな権力があるようにはどうしても思えない。

 私と博士がいたのも、下っ端の軍人が大勢いる様な普通の基地だったし。


 仮にそんな権力があったところでだ。

 普通の学園なら警察の一部さえ丸め込めればどうにでもなるところを、この学園はどんだけ手間がかかるんだって話だ。

 どこまで話が伝わってるかもわからないが、上流階級の奴らは自分が関係する様な物事にはかなり耳ざといと言うからな。


 目撃者も結構いたのだ。

 警察が来た頃には大部分が私の銃声に驚いて逃げていたから、それを探し出して口封じするだけでも大変だろう。

 仮に全員見つけて口封じできたとしても、それで完全に情報が封殺できるわけでもない。


 まさか口封じ(殺害)をこんな大人数相手にやるわけにもいかないし。

 いいとこ、ちょっとした拘束力のある契約を結ばせるぐらい。

 破られたところで騒ぎ立てたら真実だと吹聴する様なものだし、本当に口封じをお願いしてるだけなのだから。


 それに、ヴィーナも……

 いや、彼女は私が無罪放免になったって言ったら喜んでくれるようなきがするけど。

 でも、親を頼るって言ってたから少なくともヴィーナの親には伝わってるだろうし、もしかしたら他の子にも相談したりしてるかもしれない。


「リーリアが撃った男、少し調べただけでも余罪がたっぷり出て来た。依頼を受けての業務が多いみたいで、今回の件も遠からず証拠が出てくるだろう」


「そうですか。でも、それが何の関係が?」


「リーリアは、誰から見ても分かりやすく友達を守った正義のヒーロって訳だ」


 だとしても、


 私が撃った事実は、

 私が銃を持っていた事実は、

 私が人を殺した事実は、


 何も変わらないと思うのだが。


「そう疑わしい目で見るな。まぁ、確かにリーリアは立場が複雑だからな。本来はそう簡単に行く話じゃなかったんだけど、運がいいと言うべきか見る目が有ったと言うべきか」


「?」


 やっぱり、そうだよね。

 私が勝手に空回ってた訳じゃなくて、普通はこんな風にはならないんだよね?

 でも、運がいいって、


「リーリアが助けた友達だよ、ヴィーナだったっけ?」


「ヴィーナがどうしたんですか?」


 ヴィーナが?

 確かに助けてくれるって言ってたけど、でもそんなの無理でしょ。

 だって、そんなの、


「あれはね、大物政治家と人気女優の娘さんなんだよ。学園一の大物だ」


 そう、だったんだ。

 学園の子だから、どこかのお嬢様だとは思ってたけど。

 まさか、そこまでだとは思っていなかった。


 学園一か。

 なのに、何で私みたいなよくわからないのに優しくしてくれたんだろうな。

 そんな子、普通は私みたいなのをハブにするようなものじゃないの?


 よくわからない。

 何を考えてたんだろう。

 ヴィーナってやっぱり変わってる子だと思う。


 でも、


「そうだったとして、何の関係が?」


「それが、関係大有りなんだよ」


「……子供同士の話、しかも今日会ったばかりの相手ですよ?」


 いくら大物の子供って言ったって、子供は子供だ。

 親は偉いかもしれないが、別に子供が権力を持ってる訳じゃない。

 だから、もしヴィーナが大それたことをしようとしたらそれは親に頼むしか無い訳だ。


 実際彼女もそうするつもりだったみたいだし。

 でも、親の立場になって考えてほしい。

 そんな子供のわがままいちいち叶えてやるだろうか?


 多少のお願いだったらいい。

 お金持ちだったら、お金で解決できるものなら何でもお願いを聞いてくれるかもしれない。

 でも、このタイプのお願いは自ら動くかコネに借りを作ってお願いするかのどちらか。


 子供のために、ましてや会って1日も経っていない子供の友達のためにそんなことする?

 そんなことする訳ないだろう。

 親がどれだけ大物だったとしても、だ。


 特に私みたいなのを助けるなんて、付随する要素が多すぎる。

 仮に娘を溺愛してたりとか気まぐれを起こしたりで助けようとしたとして、そこで私のことを一部でも知ればそんな気持ちも一瞬で失せることだろう。

 面倒どころか、自らの弱みにしかならない。


 なのに、なんで?


「ヴィーナの父親。あれは、反戦派の中核人物なんだよ」


「反戦派……」


「つまり、この前の戦争を終わらせてリーリアが学園に行くことになった原因を作った人達ってこと。この国を平和路線に切り替えた連中だ」


 なるほど?


「それが自分の娘を助けられといて戦争被害者のリーリアを処分なんて、そんなのよそにつけ込まれる格好の的になる。だから処分なんてされないし、少し動けば簡単に事件自体を有耶無耶に出来る」


 そう、なのか。


 被害者、被害者か……

 まぁ、確かに。

 客観的に見て、私は戦争被害者か。


 加害者である博士から悪びれもなく言われるのは違和感しかないが、まぁ博士はそういう人間だから置いておこう。

 私の存在自体は平和路線の邪魔でしかないが、それを処分するような奴が平和を語れば笑われると。

 私がこんな立場でありながら学園に通えてた理由も多分これだな。


 そして、そんな状態だからこそ。

 博士でもこの罪自体をもみ消せてしまうと。


 ……


「国の癌だから普段は誰も触れようとはしない。でも、もしその癌をつけば自分へのダメージ以上に相手にダメージが与えられると判断すれば、躊躇なくその存在を白日の元に晒そうという奴も居ると言うわけだ」


「反戦派の政敵、この前まで戦争を推進してた派閥ですか」


「そう、特にそこだな。私に実験の支援をしていたのもそこだったし、リーリア個人のことは知らなくても実験のことは知っている。本気で探せば、結構簡単に辿り着く可能性もある」


 なるほどね。


 私の所在は誰でも知っている様なものじゃない。

 でも、実験自体は上層部は把握している。

 支持して、戦争で使ってたのだから当然だ。


 そして、その詳しく知ってるのが今の政府と政治的に対立している。

 国の癌だし、自らの派閥の失態でも有るから普段は触りたくもない。

 でも、それが相手の弱みになるのなら自爆覚悟で突っ込むと。


 で、ヴィーナの親もそんなことは百も承知。

 だから、私の処分には反対の立場を取らざる終えない。

 戦争派も、平和路線真っ最中に私の処分を訴えて、もし大事にでもなってこれ以上民意を失うわけにもいかない。


 消極的に、静かに、処刑反対が選択されると。

 そこで私の罪を有耶無耶にしたところで、誰も突っ込みたくもない。

 ほへぇ、よくからん。


 でも、結論……


「じゃあ、」


「うん、そう言うわけだからとっとと学園に帰りな」


「ですよね」


 でも、マジか。

 マジで、ヴィーナのおかげで助かっちゃったよ。


「あ、銃は没収させて貰うけどね」


「うぅ、」


 まぁ、そりゃそうだよね。

 別にこれ取られても、部屋にもあるし……


「部屋にあったのも回収済みだから。捜索しないわけないでしょ?」


「あ、やっぱり?」


「あんなに大量に持ち出して、リーリアはテロでもするつもりだったのか?」


「滅相もないです」


 全部、無くなっちゃった。

 はぁ……

 いやまぁ、銃なんて持ってたからこんなこと起こっちゃったわけだし残念でもなく当然か。


「友達出来たんでしょ? 寂しいなら一緒に寝て抱きしめて貰えばいい」


 ヴィーナに、抱きしめられる?


「……」


「ん? 顔赤くして、リリーアはそっちの気があったのか」


「いや、そんな訳、」


「初めて知った。それはそれは、男ばかりの軍はさぞ辛かったことだろう」


「いや、だから、」


「よかったな、これからは女の子とひとつ屋根の下で同棲生活だ」


「うるさいです!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 寮に着いた頃には夜も更けていた。


 もう寝てるだろうな。

 起こさないように、そっとドアを開けた。


「リーリアちゃん!」


 ヴィーナが飛びついてきて、力一杯抱きしめられた。

 少し痛いぐらいだ。

 私もヴィーナの背中に手を回す。


「お帰りなさい、リーリアちゃん」


「ただいま、ヴィーナ」


 やっぱりこれ、ちょっと恥ずかしい。


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