16話 再会
16話 再会
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車両が停まった。
どうやら警察署に着いたみたいだ。
結構近かったな。
ドアを開けてもらい警察に連れられ外に出る。
車両から降りた瞬間黒服に囲まれるかも、なんて覚悟していたんだがそんなことはなかった。
ちょっと意外だ。
まだ情報が伝わっていないのか、いや流石にそれはないか。
おそらくは、警察の方に話を通して正式な手続きを行うつもりなのだろう。
それで多少時間が掛かってる感じかな。
西陽が眩しい。
車内がそれほど暗いという印象はなかったが、弱い閃光弾を受けたみたいな感覚だ。
でも、その光が何処か心地よくもある。
……
これが最後、だよね。
いつ処理されるのかは不明にしても、日の光の下にまた出てこれるなんて希望的観測は持つべきではないだろう。
せめて最後に目一杯日の光を焼き付けておこう、私も遠からず天に昇るのだから。
警察署内は意外と綺麗だった。
特に匂いがないのがいい。
私が元いた基地とは大違いだ。
署内に入り少し歩いてすぐ目的地に着いたようだ。
部屋に入るよう促される。
随分と入り口から近いところにあるんだね、珍しい。
部屋の中央には背の低いテーブル、それを挟むように高そうなソファーが2つ置いてある。
部屋の隅には観葉植物が置かれ、壁には誰だか分からないが偉そうな雰囲気のおじさんの写真が何枚か。
事情聴取を行うとい聞いて、もっと取り調べ室的な部屋に通されると思っていたんだけど……
ここ、どう見ても応接間だよね?
ここで事情聴取する気なのか。
正気かこいつら?
相手が殺人犯だって本当に分かってるのかな。
どうも私に対してやたらと対応が甘い気がする。
仮に私とヴィーナの会話が本当で、発砲したことに止むに止まれぬ理由があったとしてもだ。
銃を隠し持ってた上、嫌な予感がしたから撃ったとかいうイカれ野郎なのは変わらないと思うんだが。
こいつらからはそういう警戒とか緊張感とやらを感じない。
感じるのは私への同情と興味ぐらいだろうか。
こうも私に対してそんな視線が多いのは、やっぱり見た目なのだろうか。
私がもし強面だったりしたらこうは行かなかっただろう。
もしかしたらあの時問答無用で銃撃されて、そのままケーキ屋さんでドンパチ始まっちゃってたかもしれない。
あの堅物博士、自分は男なんて興味なさそうなくせに男受けの良い容姿を作るのは得意だったんだな。
こうも見せつけられると、やっぱり天才っていうのはすごいんだなと理解させられる。
任務では容姿を使うことはなく、基本は体の性能を活かす方向が多かった。
自分の身体能力のハイスペックさは自覚していてそれだけでもすごいと思っていたつもりだったんだけど、全然評価が足りなかったみたいだ。
そんな絆されてしまった警察だが、事情聴取自体は真面目だった。
まぁ、別にそもそもの対応自体真面目じゃないのかって言われたら、私は警察じゃないので分からないのだけど。
ただ殺人犯に対してにしては甘くねって思っただけで。
私も別に茶化すつもりはなかったので、聞かれたことには真摯に答えたつもりだ。
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なぜ男を撃ったのかと聞かれた。
火薬の匂いがして、鉄の音が聞こえたから。
だから警戒していて、銃を抜こうとしたのが見えたから撃った。
男に心当たりはあるのかと聞かれた。
正直私が狙われる理由には心当たりがありまくるが、それを話すとこの警察官ごと巻き添えになって死ぬことになるだろう。
今この状態でももしかしたら殺されちゃうかもしれないけど、でもわざわざ巻き込む気はない。
だから、私に心当たりはない。
でも、一応予想はついている。
そもそも視線からしてヴィーナを狙ってたみたいだったし、おそらくはそっち関連だろう。
なんで狙われてたのかは知らないけど、制服見て分かる通り狙われてもおかしくはない存在であることは確かだ。
銃を持っていた理由を聞かれた。
それは、……自衛のためってことにしとくか。
今回みたいなことが起きた時、身を守れるようにねってことで。
その結果、今警察のお世話になってるんだけどね。
許可のない銃の所持は違法、許可があっても携帯するのは違法と言われた。
それは知っていた。
だから隠してはいたんだよ。
でも、仲間の命と天秤にかけるほどじゃなかったってだけ。
正確にはかけられないんだけどね。
私にはそもそもそんな選択肢ないし。
どこでその銃を手に入れたのかと聞かれた。
それ、聞きたいの?
余計なこと知ることになると思うよ。
でもまぁ、割と簡単に手に入ったよ。
実際、軍の備品を貰った(ちょろまかした)だけだしね。
でも、こう言っておけば上流階級の闇と勘違いするでしょ。
そんなの警察も無闇に突っ込みたくはないはずだ。
命がいくらあっても足りない世界なのだから。
まぁ、それでもっていうなら……
死ぬ覚悟があるっていうなら別に教えてもいい気がするけど。
でも、知ったところでだよな。
死体が増えるだけ。
というか、別に勘違いでもないか。
国の政策の賜物な訳だし、上流階級の闇といえばそうだ。
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しかし、遅いな……
事情聴取始まって結構時間が経ってる気がする。
流石にまだ私の情報が上に届いてないってことはないと思うんだけど。
私はいつまでこの無意味な問答を続けていればいいんだろう。
この警察の時間も無駄に奪ってしまっている。
どうせ処分することになるのに、無駄にメモなんか取っちゃって。
それに私と一緒にいる時間が長ければ長いほど、彼の生存率も下がってる。
時間無駄にするだけじゃなくて、無駄なリスクまで負うはめになって。
今日は彼にとっては最悪の厄日だな。
まさか、私の周りに目なんてなくてこの情報を認識していないとか……
いや、あり得ないだろ。
いくら平和路線とは言っても、そこまで腑抜けることがあり得るのか?
でも、あの男があそこまで私に接近しできたというのもおかしな話なんだよな。
狙いは私ではなかった。
ただ、明らかに怪しげだった。
そんなの私に近づけさせるかね。
まぁ、死ぬならそれでいいって認識だったと言われればそれまでだけど。
平和な暮らしは手配した。
そこで上が手を加えた訳でもなく死ぬなら、それはただの寿命だ。
事情聴取が続くなか、ノックがあり誰かが入ってきた。
やっと来たか。
スーツだったから上の使いが直接来たのかとも思ったけど、多分この人も警察官だな。
ここの偉い人なのかさっきまで私に事情聴取していた警察官がぺこぺこしている。
どこかで見覚えがあるような……
あ、そうか。
壁にかけてあった写真だ。
わざわざこの警察署のトップが来たのかな。
ってことは、やっぱり勘違いって事でもなさそうだね。
正式に話を通して、上の使いが来たのだろう。
「面会が来ている」
……
は?
面会?
誰がという疑問もあるが、そもそも事情聴取に割り込んで面会ってなんだよ。
そんなの許される訳ないだろ。
許されないよね?
いや、もちろん面会が来てないことぐらい分かる。
これは私を連れ出す言い訳、建前ってやつなのだろう。
だからって、もう少しあっただろ。
目の前の警察官も混乱してるじゃないか。
これなら無理やり連れ出して行くのと変わらんだろう。
警察署のトップならさ、もっとこうなんか自然なのが無かったのか。
と思っていたのだが、面会室のプレートが掛かる部屋に連れてこられた。
は?
え?
……本気?
こっからどこかに繋がる隠し通路でもあるのか。
いや、こんなとこにそんなもの用意しないだろ。
じゃあ、マジで面会なの?
誰だ?
「不思議そうな顔だな。心配しなくてもいい、君のお母さんだそうだ」
お母さん?
確かに未成年が犯罪犯したら保護者が来るのが普通だ。
でも、それ面会って言うのか?
いや、そもそもそれ以前に私に母親なんていなかったと思うんだが。
強いてあげるとすれば、昔見た太い試験管がそれに当たるのだろうか?
再利用不可だし、もうとっくに処分されたと思うけど。
あの中で育ったらしいし、母親といえば母親ではあるのだろう。
どうしよう、もしこのドアの先にあの試験管があったら。
どんな反応すればいいんだ?
と言うか、それはどう言う状況なんだ?
中に入ればいいのだろうか。
こう言うのも、膣内回帰って呼ぶのかな?
恐る恐る部屋に入ると、博士がいた。
……え?
「全く、転校初日からやらかすとは……。リーリア、君はやることがいつも豪快だな」
なんで?
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