All great things must first wear terrifying and monstrous masks in order to inscribe themselves.
この出来事は、今から丁度30年前の出来事である。
今も渋谷にある大学に、当時通っていた人は言っていた。
「随分と古いことを聞いてくるね」「確か、当時はまだバブルが弾けた直後で、全体的に極端な感じがしていた」「今は結構当たり前だけど、昔は交差点全体をCDの宣伝で埋め尽くす、なんてなかった」「しかもクリスマス前。真っ赤な写真に黒い「彼」は凄く格好良かった」
「それまではあまり興味がなかった」「でも、あんま、それしか知らない。名前は知ってるけど」「昔はCMとか、あー、なんか売れなかったドリンクのCM見て、びっくりするぐらい老けてた」「あと、めちゃいけで真似されてたやつとか」「フォークリフトの上?だったっけ?」「何年か前、なんか、チョコプラとかに真似されてなかったっけ?」「てか、まだ生きてるの?いくつぐらいなんだろう?」
あなたより10歳ぐらい上ですよ、とはさすがに言えなかった。
私も調べるまで「彼」に関するイメージはこの時点から「彼」が「正午」に差し掛かるまでしかなかった。
おそらく、ほとんどの人が32歳から37歳前後でイメージが止まったままなのでは?と思うほどこの時間「午前11時から午前11時30分」の「彼」のイメージは強い。どこか危ない感じがするイケメン感が半端ない。
そして、何より数字として結果も出ている。今から見れば「彼」は「大衆に対して」ピークを迎えた。
それは「彼」の言葉では「バンドを超えた」となり「彼」は過去から脱却するかのように見える。
起承転結でいえば「承」の時間の終わり近くに確立した、この「孤高の帝王」「Charisma」「赤色」というイメージは、最後まで少しずつ形を変えながらもつきまとう。オリジナルアルバムからの先行リリースシングル。「彼」の代表曲。
「早朝」含めて「午前中」の「彼」は取材含めて、宣伝活動をした形跡が少ない。
そもそも活動期間に対して圧倒的に露出が少ない「彼」だが「早朝直後」と、このピーク時から37歳までの「彼」は写真やCMが多く残っている。
数少ない「彼」に関する俺の記憶としてもこの時間の「カウントダウンTVのオープニング」と「代表曲のPV」が確かにある。
「彼」は「彼のバンド」を超えた。
代表曲を含んだアルバムは「最高傑作」だと、「彼」自身が当時のアルバムに対してコメントを残している。
実際に一番売れたオリジナルアルバムである。
私も当時から持っている。
そして「彼」は、バンドを超えたことにより、一般大衆と「彼」自身が作り上げた「彼」と向き合うことになる。
「午前11時から午前11時30分」の「彼」は「成功者」だ。この時間までの「彼」は、少なくとも調べられる限り、それなりの苦悩や葛藤があったであろうが、多くの人が夢破れたことを考えれば、間違いなく「勝者」である。
この人物の面白いところは、この状態であって、この時間帯は精神的に「崖っぷち」に立ってしまうことである。「彼」は自分の人生をchicken raceと間違えていたのだろうか?
「早死に」しそうにはないが。現に現在、還暦を超えている。お亡くなりになれば、流石にニュースにはなるだろう。
彼は歌う。「自分を守るのは何かを残した後だ」と。
だとするならば「彼」はアーティストとして確立された。
あとは守勢に回ってもおかしくはない。
しかして「彼」は苦悩を始める。
さて、一番売れたアルバムの名前は「青い記憶」、つまり「青春」であり、バンドを超えたアルバムは、バンド時代を振り返るアルバムである。人生を賭けて「皮肉」を体現するとは、さすが「成功者」である。常人とは違う。
その「彼」の次のアルバムの題名は「偽物を篩いにかけろ」である。
では「彼」はやはり「偽物」なのか?