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アラガミと魔法のオカリナ  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第一章 アリババと1人の盗賊
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第二十五話 非情な命令

「――ッ!?」


 なにか言葉を発する暇もなく、アラジンはバルゴに殴り飛ばされた。


「がはっ!?」


 体は一瞬宙に浮き、その後背中から地面に転がる。

 バルゴは誓約碑を肩に背負い、アラジンを見下ろす。


「へっ! ダキが! テメェなんぞが誓約碑を持ってなんの意味がある?」


 一方、ゴーレムの周囲には五竜星の3人が揃っていた。

 フーランは白銀の横笛を吹き、サボテンのような肌を持ったタコを召喚し、タコのトゲトゲの足でゴーレムの足を絡み止める。


 キツツキは手のひらの召喚陣から鎖を召喚、ゴーレムの上半身を縛る。ゴーレムの動きは完全に静止した。


 アリババはゆったりとアラジンに近づき、倒れているアラジンの顔面を右足で踏みつけた。


「ぐっ! お前……!」

「テメェは一体なんなんだ? アラジン」


 アリババの声には怒りがこもっていた。


「突然現れて、ヴィ―ドとヨルガオの信頼を得り、あの氷の王女を笑わせた。おまけに誰も解けなかった祠の暗号を解くなんてな……! 俺ができなかったことを悉くやりやがる。腹が立つんだよ、テメェは……!!」


 足に込められた力が強くなる。

 顔面ごと頭を踏みつぶされる、そうアラジンは思った。


「アリババ様!」


 アリババを止めたのはヨルガオだ。

 ヨルガオはアリババの前で跪いた。


「……その足を放してください。アラジンは味方です。この男はウンディーネを倒し、姫様を守るためにここまで――」


「スノーの命などどうでもいい」


 アリババの言葉を聞き、ヨルガオは声色を低くする。


「どういうことですか。アリババ様はアラジンの作戦を支持すると言っていたではありませんか。水霊の儀のあと、ウンディーネを打倒するという作戦を!」

「ふん。水霊の儀などそもそもやらせる気はない。ウンディーネも、この祠の精霊も、俺の()()だ」

「水霊の儀をやらない? そんなことすれば〈ジャムラ〉は干からびて滅びますよ」

「それでいいんだよ。元々〈ジャムラ〉はその運命にあった」

「アリババッ……!!」


 アラジンは両手でアリババの足を掴み、振り払う。

 片膝をついて体を起こし、アリババを睨みつける。


「お前、なにを考えていやがる……!」

「水霊の儀を止めて、ウンディーネとスノーを奪う。俺はウンディーネの力を使い、復讐を果たす」

「復讐だと? 誰に対してだ!?」

「これ以上お前に教えることはない」

「アリババ様」


 ヨルガオは槍を強く握る。


「誓約碑を奪い取るために……私達を尾行していたのですか?」

「……ここの誓約碑はセカンドプランとして確保したかった。よくここまでアラジンを誘導してくれたな、お前のおかげで俺達は万全を期すことができる」


 アラジンは立ち上がり、


「ヨルガオ! 笛を吹かれる前に、アリババを人質に取れ!」


 アラジンの提案が遂行されればアリババ一味は劣勢になるだろう。

 だがしかし、バルゴもキツツキもフーランも、アリババも、ヨルガオも、誰も動かなかった。


「ヨルガオ!? お前はスノーを助けたいんじゃないのかよ! そいつを止めないとスノーどころか国が滅ぶんだぞ!?」

「ギャーギャー喚くなカスが。ヨルガオが俺を裏切れるわけないだろ」

「……」


 ヨルガオは無言で俯く。


「ヨルガオ……?」


 ヨルガオの態度はアラジンにとってショックなものだった。

 たった数日だが、ヨルガオとは四六時中一緒に居て、互いに信頼しあっていると――そう思っていたから。ヨルガオのスノーを助けたい気持ちは本物だと、そう思っていたから。


「ヨルガオ。お前に命令を与える。――アラジンを殺せ」


 ヨルガオは淡々とした声で、


「了解」


 と言うのであった。

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